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2022.02.06

脱炭素で木材利用促進。木造建築の革命児に勝機

山形県の木造建築会社、シェルターに追い風が吹いている。2021年10月、国内の建築物で木材の活用を促進する法律が施行されたのだ。代表取締役会長の木村一義は、「木造都市の実現を目指して長年取り組んできたことがようやく芽吹いてきた」と話す。

新たに施行されたのは、「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」だ。10年施行の「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」を改正したもので、新たに民間建築物でも積極的に木材を活用する方向性が打ち出された。

木造は建築時の炭素排出がほかの構造と比べて少なく、木は炭素を固定して貯蔵する性質をもつ。「都市(まち)に森をつくる」をミッションとするシェルターでは、長年にわたり木造の可能性と重要性を産業界や政界に訴えかけてきた。

同時に、自力での技術革新に挑戦。1974年の設立当初に日本初の木造建築向け接合金物工法「KES構法」を生み出したほか、近年では、木質耐火部材「COOL WOOD」の開発に注力。2017年に日本で初めて3時間の耐火試験をクリアしている。これにより、階数や床面積、用途の制限なしに、さまざまな建築物に木材を使用できる。

21年2月には、宮城県仙台市に同技術を採用した高さ地上27mの「高惣木工ビル」が竣工した。日本初の主要構造材に無垢材を使用した純木造7階建てだ。

シェルターは、関連業者と積極的に連携し、KES構法やCOOLWOODの技術提供をしながら木造都市づくりを展開していく方針。すでに各地でプロジェクトが進行しており、22年3月には東京の日本橋、12月には銀座でも同社が技術協力した木造高層ビルが完成の見込みだ。

木村は語る。「日本は大規模な木造建築では遅れをとってきたが、これからはリーディングカントリーになり、世界をリードしていく。当社はその先頭を走っていきたい」


きむら・かずよし◎1949年、山形県生まれ。74年シェルターホーム(現 シェルター)を設立。2020年より代表取締役会長。「Forbes JAPAN SMALL GIANTS AWARD2021」東北・北海道ブロック大賞。

文=眞鍋 武 写真=佐々木 康

この記事は 「Forbes JAPAN No.091 2022年月3号(2022/1/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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