驚いたことに、「イエスタデイ」「ヘイ・ジュード」「レット・イット・ビー」などの超ヒット曲におおきく水を開け、ほぼ2倍の回数聞かれているその曲は、「ヒア・カムズ・ザ・サン」なのだ。
その理由には、「コロナ禍」という時代背景があった。
「アメリカ国立衛生研究所」ディレクターが弾き語り、デトロイトの医療機関が退院時に再生──
アメリカ国立衛生研究所(NIH)ディレクターのフランシス・コリンズ博士が「ヒア・カムズ・ザ・サン」をギターとピアノのデュアル演奏で、そして「NIHのみんな、長く寒く、孤独なコロナの冬だったね、テレワークが1年も続くとは予想もしただろうか?、ワクチンが出来て、希望がついに見えてきた……」と替え歌で、弾き語りしている。
また、米国内で感染状況がもっとも深刻な都市のひとつデトロイトにある、ミシガン州南東部で最大の医療機関バーモント・ヘルス(Beaumont Health)病院では、コロナ感染患者が退院するたび、また、人工呼吸器を外して自力呼吸ができるようになるたびに「ヒア・カムズ・ザ・サン」を再生していた時期があったという。
ほかにもマサチューセッツ州のビバリー(Beverly and Addison Gilbert)病院では、コロナが癒えて退院する患者に「Here Comes the Sun」のロゴがプリントされたTシャツをプレゼントするのが習慣になった。看護師たちがこの曲を歌いながらTシャツをたたむ様子の映像は、フェイスブックで1.5万回再生されている。
この楽曲の歌詞は、「太陽が昇る……うまくいくさ、大丈夫、長く寒く、孤独な冬だったが、氷がゆっくり融けていくのがわかる、みんなの顔に微笑がもどってきたね」といった内容。まさに「雪解け」を心待ちにするわれわれ21世紀の地球人の気持ちを代弁しているようだ。
1969年に発表されたこの曲が21世紀の今、米国を中心につよく愛し直されている理由に、そんな時代性が関連していることは間違いないだろう。