NOをなくすと面白くなる? NO「NO」法


NO“NO”がもたらす効果


NOをなくすことで、成功した事例があります。例えば、ドローンへのNOをなくした町、徳島県那賀町。ドローンは墜落の危険性などもあり、人口密集地では自由に飛ばせません。

しかし那賀町では、過疎化が進んで人が少ないことを逆手に取り「日本一、ドローンが飛ぶ町」というビジョンを掲げ、県の認定を受け、ドローン活用の実証実験の場として町を使ってもらえるよう簡単な手続きでドローンを飛ばせるようにしたのです。すると、過疎化が進んでいた那賀町に、IT企業で働く人や学生がドローンの実験をしに訪れ、町に活気が生まれました。


ドローン“OK”の町「那賀町」(徳島県)。

同じく、徳島県にある「大塚国際美術館」もよい事例です。通常、美術館では作品に対し「お手を触れないでください」と書いてあるのが定番。しかしここでは展示品が「陶板名画」と呼ばれる非常に緻密な複製画であるという特性を生かして、一部の作品にそのまま手で触れることができ、塗り重ねられた絵の具の厚みや筆遣いまでを確かめることができます。


お手触れ“OK”の「大塚国際美術館」(徳島県)。

美術品に「触れてよい」という、いままでになかった新しい体験で、年間来場者数は2018年に約42万人を記録。コロナ禍のいまも毎週末2000人以上が訪れるという話題の美術館です。

一方海外では、テキサス州オースティンにある「HOPE Outdoor Gallery」が良い事例。普段は迷惑行為とされる落書きですが、それがOKの場所をつくってみたら、ストリートアーティストが自由に落書きをし、いまや観光名所に。

世界中から見物客が集まって交通渋滞が起こるほどの人気が出ました。


落書き“OK”の「HOPE Outdoor Gallery」(テキサス州)。

価値あるルールをつくろう


ルールをつくることは、その場の文化をつくること。すべてをNOとしてしまえば、確かに問題は起こらないかもしれない。けれど、同時にポジティブな変化が生まれる可能性を奪ってしまう。だから、たくさんあるNOを少し減らしてみることで、そういった変化が起きやすい場所をつくっていく。

写真を撮っていい美術館、飲酒OK、副業OKの会社など、日本にもすでにNOをひっくり返した事例が多く生まれています。

過剰なNOをなくしてみると、過剰に抑圧されていた人々がハッピーになり、新しいアイデアや文化が生まれ、そこに自然と人が集まってくる。人が集まってくると、さらに新しい何かが生まれる。NOでガチガチのルールを、少しNO“NO”にしてみるだけで、いままでとちょっと違う、よい変化が生まれてくるかもしれません。


電通Bチーム◎2014年に秘密裏に始まった知る人ぞ知るクリエーティブチーム。社内外の特任リサーチャー50人が自分のB面を活用し、1人1ジャンルを常にリサーチ。社会を変える各種プロジェクトのみを支援している。平均年齢36歳。合言葉は「好奇心ファースト」。

高橋鴻介◎電通Bチーム・発明担当。発明を通じて、世の中に埋もれた課題やポテンシャルを発見することがライフワーク。主な発明品に、点字と文字を組み合わせた書体『Braille Neue』など。

文 = 高橋鴻介 イラストレーション=尾黒ケンジ

この記事は 「Forbes JAPAN No.087 2021年11月号(2021/9/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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