「ベースボール」の部分は変数、替わりの軸はかならずある
私の場合、アマゾン時代、その前職、そして今もそうですが、これまでの仕事のネットワークは「野球」で築いてきた、と言っても言い過ぎではないです。まさに、「ベースボール・マーケティング」。伝統的な日系企業トップの年代では、「日本の国技は実は野球だ」くらいの意識がまだありますし、野球のキーワードや話題で、話や人脈が広がることが本当に多かった。
でも、「ベースボール」の部分はたとえばであって、単なる変数。替わりの軸、つまりパートナー候補との共通項は必ず何かしらはあるはずです。たとえば「出身が関西」でもいい。
そのために、先方とのアイスブレイク、初回面談に備えて、リンクトインとフェイスブックを活用して、先方について徹底的に調べます。そして共通項を見つけたら、そこを責めまくる。先方についてのそんな情報は、管理しているメモ帳にディールごとに入れていますね。
趣味や出身などの共通項もそうですが、先方のビジネスそのものに対する興味を示して、担当者の気持ちをガッツリつかめれば案件の進行はスムーズに行く。そのために、先方企業や業界についても徹底的に勉強します。
たとえば大阪ガスとの間を行き来していた当時の私のデスクの上には、「電力・ガス自由化」に関する記事が山と積み上がっていました。「収益ベース」の計算概念や基礎となるビジネスモデルを頭に入れるためにまさに買いあさり、読みあさりましたね。
さらに、移動の時間などに最新情報にもあたって、現地の打ち合わせ先でしっかり発信する。そうすることで、先方に関心があること、最優先事項として研究をしていることが先方に伝わる。最終的には、ぼく自身を大阪ガスの社員か? くらいに思ってもらえることを理想としていました。
両社にとっての問題解決になるか──BtoBの先にはかならず「toC」がある
冒頭で、「『物を売る』という気持ちは一切不要」とお話ししましたが、とくに、大阪ガスとの案件のように「どっちを向いても前例のない契約」を進める上での根底にあるのは「両社にとっての問題解決になるかどうか」でしょう。
既存の手段が問題解決につながるのであれば、わざわざ新しいものを立ち上げる必要はない。だが、たとえば大阪ガスとの案件のような場合は、両社にとって「ウィン」が積み重なる。
さらにいえば、BtoBの案件でも、エンドユーザーである個人消費者への視点は絶対不可欠。「顧客にとっての」問題解決になるのかどうかが、すべての案件の存在意義や動機になりますよね。大阪ガスとのプロジェクトは、なによりも、両社のカスタマーにとっての大きなサービスになるという確信がありました。