ビジネス

2022.02.21 08:00

元アマゾン伝説の交渉人に聞く「アイスブレイクの営業極意」


TAM/SAM/SOMは絞り込みを行うための手法です。企業の総予算を総市場と捉え、そこから自社が入り込む余地を算出するんです。

だから、たとえば「TAM(総市場)」がA社だったとすると、IR情報に記載のある広告宣伝費、たとえばおよそ100億円を入れる。

次に具体的な「SAM(ターゲット市場)」「SOM(自社市場)」を見ていく。たとえば今私が関わっているTikTokの広告ソリューションの場合、「SAM」はデジタル広告です。そして、電通・博報堂の「広告宣伝費のおおよそ36%がデジタル広告の予算」という調査発表にもとづけば、A社が実際にデジタル広告にいくらくらい使っているかが想定できます。

さらに、TikTokにそのうちのいくらくらい使ってもらいたいか(「SOM」)を定める。たとえば「SAM」の10%、と目標設定したら、そのターゲット候補にとってのホワイトスペース(新しいビジネスモデルでなければ成功しえない事業領域)にTikTokが貢献し得るという説得資料として、「TikTokが実際に今、どういう業界でどういう使われ方をしているのか」の事例を集め、その事業領域のだいたいのオポチュニティーがわかるようにターゲット企業をリストアップします。

そして、実際のコンタクト。つてをたどってのパーソナルコンタクトでいくのか、コールドコール(ターゲット企業に代表電話からアプローチし、決裁権を持つ担当者につないでもらう)でいくのかを決めて、接触します。

ターゲット企業には、とにかくまず「クライアントにとっての課題解決につながるマーケットがある」ということを見てもらい、その業界での自社サービスの使われ方が「そのマーケットにしっかり訴求できている」ことを示す資料を作成する。もちろん、同時に何社もは行けないですから、接触する優先順位を決める。

それを1年間、回していく。大きいところが取れればそこに付ききりになってしまいますし、ターゲティングに困ることはまったくない。商材が変わってもやり方は同じです。


次ページ > 「ベースボール」の部分は変数、替わりの軸はかならずある

文=石井節子 写真=曽川拓哉

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事