アンリミテッド・トゥモローが目指す、新たな義肢の世界標準

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アンリミテッド・トゥモロー(Unlimited Tomorrow)の創設者で最高経営責任者(CEO)を務めるイーストン・ラシャペル(Easton LaChappelle)が同社を立ち上げたのは、2014年のことだ。それは彼が18歳のときだったが、彼はすでに、起業までのほとんどの日々を、義手の性能向上に費やしていた。

「私は子どものころから機械いじりが大好きだった。物事がどう動くのか、なぜ動くのかを知りたかったからだ」とラシャペルは振り返る。「14歳のときに、手袋を使ってコントロールするロボットアームを組み立てた。プログラミングと組み立て方はすでにマスターしていて、レゴのブロックを使い、釣り糸を腱の替わりにした。寝室を実験室に改造した。2000年代のはじめには3Dプリンターに夢中になって、もっと本物らしい人間の手や腕を作るようになった」

ラシャペルが自分の真の目的を見出したのは、2013年に参加した科学フェアだった。「そこで、義手の少女に出会った」とラシャペルは説明する。「彼女とその親たちと話をしているうちに、義手は何万ドルもするのに、制作に半年程度もかかり、成長につれて体に合わなくなることを知った。そして、彼女のような義肢を使う人には、もっと性能のいいものが必要だと思った」

「義肢が必要な人は、米国に200万人、世界に6000万人もいる。彼らの生活ニーズを満たす技術を開発するには、どうすればいいのだろうか。そうした技術は、入手しやすく、価格も手ごろで、長く使えるものでなくてはならない」

ラシャペルは、そうした技術の実現を目指して動き出した。彼の言葉を借りれば、「ガレージに集まった数人」の船出だったという。しかし会社はまもなく、貴重なパートナー企業を得た。

「2016年に、私たちが初めて作った義手のプロトタイプを、モモという少女に装着してもらった。我々がマイクロソフトのXbox Kinectのセンサーを3Dスキャナー替わりに使っていたところ、同社から電話がかかってきて、このプロジェクトが実現した」

それを機にアンリミテッド・トゥモローは、マイクロソフトとコントローラー技術で提携するようになった。のちには、「Multi Jet Fusion 3D」テクノロジーを持つHP Inc.とも手を結ぶことになった。提携先はほかにも、シーメンス、マクソン(Maxon)、アメリカン・バンクノート(AB Corp)、アロー・エレクトロニクス(Arrow Electronics)などがある。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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