ヒーローが苦もなく問題を解決するストーリーなんて退屈だ。それなのに、ビジネスストーリーの語り手たちは往々にして、中盤の悪戦苦闘の部分を抜かしてしまう。
「これが、なぜ大きな間違いなのかというと、人は成功よりも、失敗と苦難から多くを学ぶからだ」と、リーバーは言う。「ヒーローが意を決してどん底の部分から大きな一歩を踏み出し、悪役を倒した時、聞き手は有益な情報を山ほど得ることができる」
リーバーによれば、挫折の部分をおざなりにして、すぐに終盤のクライマックスに到達してしまっては、学習機会が失われる。
「だからこそ、ライターとして、基調講演者として、講師として、私はクライアントに向けて、どん底を充実させるようにと教えている」と、リーバーは言う。「聴衆が居心地悪く感じるくらい、挫折の部分をしつこく語るべきだ。聴衆を、ストーリーの中盤に放り込もう。どん底の部分にある、混乱や困難、ハードルの一部を、聴衆に疑似体験させよう」
このプロセスが適切に行なわれたら、どん底からクライマックスに至る旅は、もっとエモーショナルで忘れがたいものになるだろう。
「ストーリーが幕を閉じる頃には、忘れられない教訓を学んでいるはずだ」と、リーバーは述べた。