「職場に友人を求める人は32%」この数字をどう見るべきか

Tara Moore / Getty Images

従業員の燃え尽き症候群や離職率が史上最高(もしくはそれに近いレベル)を記録するなか、ほぼすべての企業は、従業員と関係を深め、つなぎとめ、意欲を高める方法を見つけようと躍起になっている。多くの会社やリーダーにとって、それはつまり、従業員と会社の、そして従業員どうしの絆を強めることを意味する。

人は職場に友人をもちたがる、とはよく言われる。それについてあまり考えたことがない人でも、至極もっともな話に思えるはずだ。なんといっても、リモートやハイブリッドで仕事をしているあいだに、同僚との人間関係が打撃を受けてきた人は多いのだから。

筆者が創業したコンサルティング企業リーダーシップIQが実施した「在宅勤務の状況(The State Of Working From Home)」調査では、職場の同僚との関係について、オフィスで仕事をしているときのほうがよいと答えた従業員は54%、在宅勤務をしているときのほうがよいと答えた人は15%、場所にかかわらず同じと答えた人は30%だった。

だが、同僚との関係が打撃を受ける一方で、友人、家族、配偶者、子どもなどとの関係は、在宅勤務をしているときのほうが大幅に向上する。前述の調査では、プライベートの人間関係について、在宅勤務をしているときのほうがよいと答えた従業員は57%、オフィスで勤務しているときのほうがよいと答えた人は17%、場所にかかわらず同じと答えた人は26%だった。

この事実は、企業のリーダーたちにちょっとした謎を投げかけている。従業員にとっては、職場の同僚とよい関係を築くほうが重要なのか? それとも、友人、家族、配偶者、子どもなどとの関係をよくするほうが大切なのか? どちらの関係を改善すれば、従業員の燃え尽き症候群を減らせる可能性が高くなるのだろうか?

だが、それはスタート地点にすぎない。というのも、同僚との関係を重要なモチベーション要因と見ている従業員は、全体の3分の1にすぎないからだ。

リーダーシップIQが実施したまた別のオンラインテスト「あなたが働くモチベーションは何?(What Motivates You At Work?)」では、仕事の意欲を高める原動力には、「帰属」「達成」「権力」「安全」「冒険」の5つがあることがわかった。

「帰属」のスコアが高い人は、同僚とのコラボレーションや友好的な関係を求める。人に好かれやすく、会社全体やチームでの幅広いネットワークを持っていることが多い。お察しのように、職場に友人がいることでもっとも大きな恩恵を受けられるのは、このタイプの人たちだ。だが現在のところ、このテストのデータによれば、このタイプの人は約32%にすぎない。

人を動機づける要因はほかにもある。たとえば、おもなモチベーションの原動力が「権力」である人を相手にしている場合を想像してみてほしい。このタイプの人は、リーダーの役割につくことや、他の人に指示を出せることのほうに、はるかに強く突き動かされる。人やグループを任されたり、他者に助言や影響を与える機会を得たりすることで意欲を高めるタイプの人たちだ。そうした人の場合は、個人的に親しい友人が職場にいたところで、それほど大きな影響を受けるとは思えない。

こうしたことを踏まえると、要点は単純だ。燃え尽きや離職の大量発生のさなかに、従業員と関係を深めて引きとめる方法を模索しているとしても、一般的な通念や陳腐な決まり文句には耳を貸さないことだ。もしかしたら、あなたの会社の従業員は、職場での人間関係の悪化を経験しているかもしれない。しかし、プライベートの人間関係が大きく向上しているのなら、職場の友人にそれほど意味があるだろうか? 

職場の人間関係の急激な悪化が心配だとしても、「職場の友人」が、本当に従業員のモチベーションになるのかについては、問う必要がある。すべての人に合うひとつの答えは存在しないが、一人一人に合った解決策はたくさんあるのだ。

翻訳=梅田智世/ガリレオ

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