ビジネス

2021.12.13 06:30

企業がオフィス勤務を再開させたい本当の理由

Gabriel Vergani / EyeEm / Getty Images

私たちは仕事で、ある非常にシンプルな疑問を無視してしまいがちだ。それは、子どもが得意な「なぜ?」という問いだ。

会社からオフィス出勤を増やすよう求められる従業員は、その理由として、チームビルディングや、従業員同士のつながりや協働のためにはオフィス勤務が必要だと説明される。こうした点を考慮することは確かに重要だ。しかし、上司や雇用主も意識はしていないかもしれないものの、こうしたオフィス出勤命令の背景には、これよりもずっと大きな理由がある。それは、「コントロール」だ。

コントロールは不安に対する強力な対処法であり、不安は人が対処しなければならない感情の中でも特に不快なものだ。例えば、乗っている電車が遅延し、車掌から何の説明もない場合、非常にいら立たしく感じる。だが同じ状況で、車掌から「別の電車を通すため赤信号で15分停止します」と伝えられたなら、少しだけいらつくが、強い怒りは感じないだろう。

新型コロナウイルスの流行により、私たちは皆、不安の中で1年以上を過ごしてきた。人々が生活の中でコントロールできる部分を増やそうとするのも自然なことだ。そうしたコントロールの対象は、会社の従業員にまで及ぶかもしれない。

一部の会社では、遠隔勤務により表面化した信頼関係の問題が盛んに議論されてきた。ソフトウエアなどを使った従業員の監視は、新型コロナウイルスの流行が始まってから50%増加している。しかし、これは従業員に対する信頼度とは関係なく、コントロール願望を満たすための口実に過ぎないかもしれない。

従業員が雇用主との間に持つ心理的・物理的な契約は変化している。企業はより人間的なレベルで従業員を支援する必要があり、人材をリソースではなく「人」として見る必要がある。

在宅勤務がより人間的な交流を可能にする場合もある。ビデオ会議で相手のリビングルームの様子を5分間見るだけで、その人の趣味や関心、家庭生活について多くのことを学べる。オフィスでの会話では自然に出てこず、それを知るには数カ月、あるいは数年かかったかもしれないような情報だ。

こうした知識により、全く新たなレベルでの人間関係が構築でき、オフィス環境でしかできないとされていたはずのチームビルディングや従業員間のつながり向上が可能になる。
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編集=遠藤宗生

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