ライフスタイル

2021.12.19 18:00

料理人を長く続ける秘訣は「人に愛される力」


あらためて感じるのだが、料理人を長く続けられる秘訣の一番は、「人に愛される力」だと思う。生産者に愛されたら、出来のよい食材を提供してもらえる。お客様に愛されたら、褒め言葉だけでなく、「今日の料理だけど、○○は××したほうがいいね」「今度○○さんと一緒に来るよ」「○○という店がおいしかったから、今度行くといいよ」「実はこんな掘り出し物の物件があるんだけど、どう?」など、有益な情報や素敵な人脈をどんどん与えてもらえる。それらの大きな財産によって、料理人はさらに成長することができるのだ。
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二番はやはり「センス」だろう。センスというのは、料理をつくっているだけでは磨かれない。本を読んだり、映画や芝居を観たり、アート鑑賞したり、旅に出たり、違う業界の人と会ったりと、仕事以外の時間にどれだけ億劫がらずに動けるかが肝だ。脇屋さんはその2つがピカイチだと思う。

20年続く「Wakiya一笑美茶樓」のように、いつ行ってもその場所にある、自分にとっての「帰る店」があるのは、本当に幸せなことだ。師匠から弟子へ、父から息子へ、自分の紹介で新しい人が常連に──。いい店では縁が縦横無尽に広がり、引き継がれていく。もはや腹を満たすだけの場所ではない。長い時間をかけた壮大な物語に、自らも出演者のひとりになれると、人生はそれだけで充実する。

今月の一皿



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「Wakiya一笑美茶樓」の麻婆豆腐。なめらかで弾力のある絹ごし豆腐と花椒粉の香りに食欲をそそられる。

blank




都内某所、50人限定の会員制ビストロ「blank」。筆者にとっては「緩いジェントルマンズクラブ」のような、気が置けない仲間と集まる秘密基地。


小山薫堂◎1964年、熊本県生まれ。京都芸術大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わり、2025年大阪・関西万博ではテーマ事業プロデューサーを務める。

写真=金 洋秀

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