これに対して、応募者が次のように答えた場合はどうだろうか。
「私は時々、先を急ぐあまり、キーボードを打つよりも速いスピードで物事を考え、じっくり考えずに自分の考えを文章にしてしまうことがありました。そのようにして作成した書類を、別の観点から確認してもらうため、上司に送信したことがあります。上司は、私と2人だけの場で、内容をほめてくれたうえで、もう一度目を通して、言葉をいくつか修正してみるよう言いました。それ以降、私はアイデアをまとめて書類を作成するときに、思考スピードを落とすよう心がけてきました」
こう回答すれば、自らの実例を挙げているし、月並みな決まり文句を何も考えずに並べ立てているわけでないように聞こえる。さらに、上司からの厳しいフィードバックを積極的に取り入れようとする人間だという印象も与えられる。
面接で想定される質問への受け答えを練習するときは、自分がこれまでの仕事で経験した具体例を振り返ることに力を入れるべきだ。月並みな決まり文句を丸暗記しようとしても、わざとらしくて説得力のない回答だと思われるのが関の山だろう。最悪の場合は、「白か黒か」タイプの思考をする人間であることが露呈してしまう。
私たちの調査で、「常に」「絶対にない」「不可能」「すべて」「ひとつもない」「毎回」という絶対的な表現が、これほど否定的に受け止められているという結果が出たのには理由がある。こうした表現を、無知だと思われたり、思い込みの激しい人間に見えたり、適当な言葉を並べ立てているという印象を与えずに用いるのは、きわめて難しいのだ。
従って、決まりきった回答例を練習することに時間を割くよりも、自分の実体験をしっかり振り返ったほうがいい。そのほうが、応募者としていい印象を与えられるし、面接官も大いに評価してくれるはずだ。