ビジネス

2021.12.10

ブラジルのデジタル銀行Nubankが上場、時価総額5兆7000億円に

Nubank共同創業者 クリスティーナ・ジュンケイラ (c) Nubank

ブラジルのデジタル銀行Nubank(ヌーバンク)が12月9日、ニューヨーク証券取引所に上場した。株価はIPO価格の9ドルから約15%上昇して10.33ドルをつけ、終値ベースの時価総額は500億ドル(約5兆6800億円)近くに達した。

これにより、同社の2.9%を保有する共同創業者のクリスティーナ・ジュンケイラ(39)の保有資産は13億ドルに達し、CEOで23%を保有するダビド・ベレス(40)の保有資産は102億ドルに達した。

元ベンチャーキャピタリストのベレズ、元コンサルタントのジュンケイラ、ソフトウェアエンジニアのエドワード・ウィブルの3人は、2013年にNubankを立ち上げた。その当時、ブラジルではイタウやサンタンデールなどの5つの銀行が市場をほぼ独占し、高い金利や法外な手数料で巨額の利益を得ていた。

顧客サービスは劣悪で、カードの利用状況を知らせるテキストメッセージでさえも、有料にしている銀行があった。「なぜ、このような恐ろしい商品を人々に押し付けなければならないのか、理解できなかった」と、ジュンケイラは当時の状況を話していた。

Nubankは、2014年に年会費無料のクレジットカードを発行し、その数年後に当座預金と普通預金の提供を開始。今では個人向けローンや投資サービス、生命保険なども提供するデジタル銀行に成長した。

ブラジル、メキシコ、コロンビア、アルゼンチンで4800万人の顧客を獲得したNubankの売上は、今年の年初からの9カ月間で10億6000万ドルに達し、2020年のほぼ2倍に伸びている。売上の30%は、顧客がカードを使用した際に加盟店が支払う手数料の「インターチェンジ」で、消費者がクレジットカードで支払うリボ払いの利息が23%、個人向けローンの利息が15%となっている。

Nubankはまだ黒字化を果たせておらず、1~9月に9900万ドルの損失を出したが、同業他社に比べて持続可能なビジネスの構築に近づいている。同期間の顧客1人当たりの売上は4.90ドル、年間では59ドルで、顧客1人あたりの獲得コストは5ドルだった。一般的にフィンテック企業のコストの多くはマーケティング費用だが、Nubankは売上の4%にあたる4500万ドルしかマーケティングに用いていない。

対照的に、ニューヨークに拠点を置くデジタルバンクのMoneyLionは、2021年第3四半期に売上の31%をマーケティングに費やしていた。

編集=上田裕資

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