郵政民営化を進めるべく総選挙が行われた2005年。構造改革への期待の高まりから株価が急騰し、ビジネスチャンスに沸き立った証券界のなかで、当社は、お客様の急増に対応できず、相次ぐシステム障害に頭を抱えていました。
その翌年に社長に就任した私は、すでに大勢のお客様を抱え、社会インフラ化していたシステムの改善と安定稼働を最優先課題に掲げ、5年ほどの歳月をかけて立て直し、2012年から始まったアベノミクスによる株高局面では、業績が向上。ようやく、お客様にも安心してお取引いただける環境を整えられたことに、胸をなでおろしました。
多くの人は本能的に失敗を遠ざけようとします。それは組織も同じ。トラブルが起きても、表面的な問題だけを片付けるだけ、もしくは、ある特定の個人や部署のせいにして、事を収めてしまうことも往々にしてあります。
同じ失敗を繰り返したくないのなら、トラブルと正面から向き合い、追い込み抜いて、試行錯誤を繰り返し、より深いところにある真の原因を見つけなければならないことを知っているはずなのに、です。
本書は、オックスフォード大学を首席で卒業したジャーナリストが、病院での医療ミスや航空機事故、グローバル企業、プロスポーツチームなど、あらゆる業界を横断し、失敗の原因とその失敗への対応を分析して、失敗の構造を解き明かそうとする一冊です。
失敗をどう受け止め、組織をどう変えていくべきかという方法を知るだけでなく、「失敗から学び、成長していく」必要性も伝わってきます。
2018年、私は本書に書かれている一つひとつの事柄を読み進めながら、重要な箇所に線を引き、これまで自分がやってきたことの答え合わせをしたような気がしています。