ビジネス

2021.12.01

宗教の行動様式とグローバルジャイアントが日本で生まれない理由

米SF市街地のGoogle近くにある聖パトリック教会 photo by Kit Leong / Shutterstock.com


新任の事業部長が、前任者が決めた改善の方策や新たな取り組みを知り「オレは腹落ちしていない。実行する必要があるから再検討すべきだ」と、“そもそも論”を展開し、進みかけたプロジェクトの進捗を停滞させてしまうようなシーンを見たことがある方もいるのではないでしょうか。

もちろん、現場の意見に基づき戦略や方針を定めるようなボトムアップ型の意思決定が悪い訳ではありません。しかしそれは市場環境の変化が少なく見通しが立つ状況に向いています。今私たちが直面しているような、完全競争市場に近似している市場では、意思決定・行動双方の「速さ」が勝敗を分けます。合意形成に時間がかるボトムアップより、トップダウンに利点が多いと考えます。

戦場は戦術を問う場ではなく実践する場であると考える、トップダウン型の意思決定に慣れた外資系企業と、現場からの意見や既成事実を積み重ねて決断に至るボトムアップ型の日本企業の志向の違いが、日本発のグローバルジャイアントの輩出を阻んでいるもう1つの要因と言えるのかも知れません。

歴史を振り返ると資本市場はプロテスタントがつくったといえます。それを踏まえ、日本企業は、まず自分たちが置かれている市場環境は決して自分たちに有利につくられていないという事実を認識することが肝要だと考えます。その上で、敵方が定めたルールをあえて受け入れ正面から戦いを挑むのか、それとも自らが栄えるためのルールや市場を新たにつくり転進するかを決めなければなりません。

もし前者を選ぶなら、完全競争市場で勝ち続けているグローバルジャイアントの行動様式を学ぶべきですし、もし後者を選ぶとするならマックス・ウェーバーが西欧の歴史の中から、“彼ら”の資本主義を読み解き体系化したように、日本に有利な市場のあり方を捉え直す作業が必要でしょう。

いずれの選択も楽ではありませんが、日本が持つ豊かな文化と歴史にヒントがあると考えます。次回は今回の論を踏まえ、日本企業が進むべき道についてさらに考察していこうと思います。


【連載】今までにないアプローチでデジタルを理解する

#1:戦争論もドラッカーも古くない。デジタル時代こそ古典ビジネス論へ
#2:何かご一緒できたら──は無用。日本企業はスタートアップを正しく評価せよ
#3:ビジネスプラットフォームに活路? ならば肝に銘じる4つのポイント
#4:グローバルジャイアントが日本に生まれない、宗教の行動様式という新視点

保科氏の社h心
中村健太郎◎アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 通信・メディア・ハイテク アジア太平洋・アフリカ・中東・トルコ地区統括 兼 航空飛行・防衛産業 日本統括 マネジング・ディレクター。フューチャーアーキテクト、ローランド・ベルガー、そしてボストンコンサルティンググループを経て、2016年にアクセンチュアへ参画。全社成長戦略、新規事業創造、デジタル、組織・人材戦略、M&A戦略、等の領域において、幅広い業界のコンサルティングに従事。

文=中村健太郎(アクセンチュア)

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