作成:アクセンチュア
もちろんこれは、私独自の分析による新説などではありません。19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したドイツの著名な社会学者、マックス・ウェーバーが著した『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』に記された論を私なりに要約したものです。
米国でプロテスタントが大きな力を持ち得たのは欧州から遠く離れた彼の地で、旧態依然とした欧州への対抗意識やルサンチマン(怨嗟)を原動力に、行動主義、契約主義、目的合理性に根ざした行動規範を精鋭化させていった結果でしょう。
それがやがて、意思決定の速さ、行動の速さ、リソースの大量投下により「スピードとスケール」を実現させたグローバルジャイアントの輩出につながったというのが、私の見立てです。
●強さの源泉はここにある
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別の言い方をすれば、近代資本主義はその黎明期からプロテスタンティズムの影響を色濃く受けていきました。WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)によって、長らく社会の指導層が占められていた米国が、完全競争市場での戦い方に長けているのは自明のことなのかも知れません。
つまりわれわれ日本人は、そもそも競争相手が数世紀にわたって育んだルールの下、厳しい戦いを強いられているともいえるでしょう。
戦場は戦術を問う場ではない。それなのに……
外資系企業、とくに米国企業にお勤めの皆さんなら、行動主義、契約主義、目的合理性が、日々の働き方にどのような影響をおよぼしているか、感覚的に理解していただけるのではないでしょうか。
外資系企業に就業する際は、たいていジョブディスクリプション(職務記述書)を明確に定めてから雇用契約を結びます。
戦略策定やビジネス上の目標設定にミドルマネジメントや現場のメンバーが意見を言うことはあっても、経営陣が決定を下してから、すでに決着が付いている議論を蒸し返したり、異論を差し挟んだりするような振る舞いは契約違反。“ちゃぶ台返し”を許容していては、いくら時間を費やしても物事は前に進まないからです。
外資系企業では、メンバーは自分が所属する組織、また自らに割り振られた役割や数値目標の達成に邁進することによって成果を出し、その達成度や貢献度によって評価されるのが一般的です。さらに行動することに重きが置かれ、失敗することよりも行動をしないことがマイナスに評価される傾向があります。
翻って、社員の役割を明確に定めず、メンバーシップ雇用やボトムアップ型の意思決定を慣例化している伝統的な日本企業ではどうでしょう。