住民に「選ばれ続ける都市」に欠かせない要素とは

企業と消費が中心の意識から、イノベーションと体験が中心に(Marco Bottigelli/Getty Images)


都市によって異なるシナリオ


北米以外の大陸では、移住のパターンは異なります。都市化率がほぼ80%に留まっている欧州や中南米諸国では、テレワークやハイブリッドワークの比率は上がり、人々には新たな選択肢が増えることが予想されています。ただし、土地利用、インフラ、技術様式は地域に固有であるため、その影響も国により異なってきます。

中国、インド、東南アジア諸国連合(ASEAN)、中東では、注力する事業部門や業務がその他の地域とは異なったり、都市化率が加速し続けていたりするため、変化は比較的少ないと思われます。

一部の国では、人々はエンターテインメントを楽しむように、都市を体験し始めています。人々はもはや職業によってその場所に縛られることはなく、好きな時に好きなものを手に入れることができます。住民が自身の都市体験を形成し始めると、複数の都市に住むことになるかもしれません。都市のリーダーたちは、住民の新たな優先事項に合わせて、コミュニティを適応させる必要があります。


未来はよりハイブリッドに イメージ:McKinsey & Company

都市経済のデジタル化:都市への物理的な影響


最大の課題は、建造環境におけるインフラの役割を再考することです。テレワークが主流となっている多くの都市では、オフィススペースの使い方を変えていく必要があります。オフィススペースは、ブランド構築、クリエイティブなコラボレーション、そしてトレーニングを優先して再構成され、オフィスですべきことと、自宅や都市の共有スペースでできることをより明確にすることができます。

都市開発業者は、イベントスペース、レストラン、ジムなどの施設とオフィススペースを融合させ、商業エリアと住宅エリアが互いに競合するのではなく、補完し合える方策を検討することができます。そのためには、都市は公共スペースや共有スペースの使い方を再考し、多用途に利用できるようにする必要があり、それによってインフラ最新化の需要がさらに高まる可能性があります。

つまり、デジタル・インフラを強化し、新しいデジタル経済に対応するための物流・輸送インフラに投資することが重要です。フルフィルメントセンター(物流拠点)の土地利用を増やすことや、カーブサイド・ピックアップ(注文商品の車中受取り)を有効利用する必要性などがその一例です。

デジタル化の興味深い特徴の一つは、物流、配送から、データセンター、ダークキッチン(デリバリーに特化した飲食店)や新形態のコワーキングスペースに至るまで、土地利用に影響を与えることです。

都市の競争優位性の鍵は、柔軟であることです。都市は土地利用を収益化するために、ディベロッパー、投資家、イノベーターと早期に協力関係を築き、都市の再構成を進める必要があります。
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文=Greg Clark, Global Head, Future Cities and New Industries, HSBC; Miguel Gamiño, Executive Vice-President, Global Cities, Mastercard

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