同社がBESSを導入したのは、シンガポール西部の複合施設「ワン・ホーランド・ビレッジ(One Holland Village)」の建設現場だ。ファーイーストでディレクターを務めるAugustine Tanによると、1カ月前の導入以来、騒音や二酸化炭素排出量が減少し、現場における大気環境が改善されたという。
ワン・ホーランド・ビレッジは、シンガポールで最大手の建設会社の1つであるWoh Hupが管理する現場の1つだ。同社は、チャンギ空港直結の複合施設ジュエル(Jewel)など、シンガポールを代表するランドマークを手掛けており、香港のスタートアップ「Ampd Energy」から、大規模なBESSを仕入れたという。
Ampd Energyは、2014年の設立後、中国で電動スクーターを製造していたが、2018年に建設会社のGammonから、建設現場全体の発電に使えるバッテリー式発電機の設計を依頼されたのを契機に、BESS製造に事業を転換した。同社は、2年前に最初のバッテリー式発電機を香港で設置して以降、香港とシンガポールの建設現場60カ所に80台のBESSを導入した。同社の創業者でCEOのブランドン・ウンによると、今年中に20台を追加で提供する計画という。
建設現場の大気汚染や騒音を軽減
Ampd Energyは、ロンドン本拠の「2150」や、シドニー本拠の「Taronga Group」などのベンチャーキャピタルの出資を受けている。同社は、世界中の建設現場で使われている数千台のディーゼル発電機をバッテリー式に置き換えることで、二酸化炭素排出量と騒音を削減することを目指している。
「都市化によって大規模な建設プロジェクトの需要が増え、環境に悪影響を及ぼしている。我々は建設会社から緊急の要請を受け、よりクリーンで静かなことに加え、効率的で安全な電力供給を実現するためのバッテリーソリューションを設計した」とウンは話す。彼は、フォーブスの「30アンダー30」に選出されていた。
Ampd Energyは、フォーブス・アジアが8月に公表した第1回の「100 to Watch」(アジア太平洋地域で注目の中小企業・スタートアップ100社)に選出された。同社のBESSの「Enertainer」はディーゼル発電機に比べて32倍も静かで、建設現場における二酸化炭素排出量を最大85%削減できるという。建設現場の多くが人口密度の高いエリアにあるシンガポールにとって、これは朗報だ。
ウンは、デベロッパーや建設会社がEnertainerを導入することは、経済的にも理に適っていると指摘する。リース料は、ディーゼル発電機の方がBESSより安いものの、燃料費を加えた総額は同等という。
Ampd Energyによると、建設会社Hexacon Constructionが手掛けるオフィスビル「Central Boulevard Towers」の建設現場でもEnertainerが導入されるという。他にも、シンガポールのセントラルビジネスディストリクトの端に位置するコンドミニアム「The M」や、Dragages Singaporeが建設中の「BCA Academy」でも導入予定という。