同社はオックスフォード大学と共同で開発した新型コロナウイルスのワクチンについて、貧困国への供給分以外を除き、今年第4四半期(10~12月)の受注分から無利益での販売を終了。
新たな契約で得ることになる利益は、抗体薬の生産にかかるコストに充てる方針だという。同社は現在、ワクチンと抗体医薬を専門に扱う部門を創設する計画を進めている。
アストラゼネカの第3四半期の新型コロナウイルスワクチンの売上高は、10億5000万ドル(約1190億円)。今年第1四半期と第2四半期の売上高は、それぞれ2億7500万、8億9400万ドルだった。今年9月末までに、世界全体でおよそ15億回分を供給している。
一方、mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンを生産する米ファイザーとモデルナの今年第3四半期の売上高は、130億ドル、50億ドルとなっている。
「世界を救う」と期待されたが─
大手製薬会社の中で、パンデミックが続く間はワクチン販売による利益を求めず、原価で販売すると約束していたのはアストラゼネカのみだった。
同社が利益を求めないとしていた具体的な期間は、明らかにされていない。だが、同社幹部は各国との契約をケースバイケースで見直す可能性があることを示唆。また、英紙フィナンシャル・タイムズによれば、各国との契約には、一定期間が経過して以降、同社がこの期間を自ら判断できるとの条項が含まれているという。
それまで経鼻噴霧型のインフルエンザワクチンを生産しているだけだったアストラゼネカが、新型コロナウイルスワクチンの開発を実現したことは、多くにとっての驚きだった。
ファイザーやモデルナが生産する「mRNAワクチン」よりも安価で、過去にもその他のワクチンの開発で採用されていた「ウイルスベクターワクチン」のアストラゼネカ製のワクチンは、当初は世界を救うものになると期待された。
だが、安全性も有効性も高い一方で臨床試験や流通などにおいて数々の問題に直面したほか、まれなケースではあるものの、血栓症が起きる懸念も指摘されていることから、世界的に評判が低下した。
ただ、新型コロナウイルスのワクチンの公平な分配を目指す国際的な枠組みCOVAX(コバックス)において主に使用されているのは、アストラゼネカ製だ。