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2021.11.12 17:00

コロナ治療薬「レムデシビル」に耐性示す変異を確認 症例報告

抗ウイルス薬「レムデシビル」を開発した米バイオ製薬ギリアド・サイエンシズ(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

抗ウイルス薬「レムデシビル」を開発した米バイオ製薬ギリアド・サイエンシズ(Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に感染した免疫不全の患者から採取したサンプルから、米バイオ製薬ギリアド・サイエンシズが開発した抗ウイルス薬「レムデシビル」への耐性を示すSARS-CoV-2の変異が確認されたという。

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)患者の症状が長期にわたって改善しない場合、この抗ウイルス薬に対してさらに強い耐性を持つ変異が起きる可能性もあると懸念されている。

査読前の論文を公開するMedrxivに先ごろ発表された症例報告は、Covid-19の治療にレムデシビルを使用した70代の女性について、「数カ月が経過した時点でも、体内からSARS-CoV-2が検出された」と説明。治療中に、レムデシビルの効果を弱めるような変異が起きていたことを示すものだと述べている。

報告書を作成した研究者の一人、米エール大学の岩崎明子教授(免疫学)は、「この患者のウイルス量はレムデシビルの投与によって一度は減少したが、治療の過程で再び増加。最終的には、モノクローナル抗体薬の投与によって治癒した」と説明している。

この患者は以前に非ホジキンリンパ腫で治療を受けており、免疫力が低下していた。報告されたこの女性の例は、免疫不全のCovid-19患者の場合、「レムデシビルに耐性を持つSARS-CoV-2の変異について継続的に監視することが重要性であり、治療には複数の薬の併用が効果的な可能性があることを示すものだ」という。

ただ、岩崎教授によると、GISAID(SARS-CoV-2の遺伝子配列情報のデータベース)に登録された約410万のゲノム配列のうち、こうした変異が確認された割合は0.003%で、非常にまれなケースだと考えられている。

WHOは使用を推奨せず


ギリアド・サイエンシズが開発したレムデシビルは、Covid-19の治療薬として、病院での使用が初期に承認された薬の一つ。静脈内に投与することで、中等症以上の患者の症状に改善がみられるとされている。

ただ、その有効性が完全に確立されているわけではなく、世界保健機関(WHO)は2020年11月、生存率の上昇や治療の経過・結果の改善につながっていることを示す十分な証拠がないとして、「使用は推奨しない」との見解を表明している。

編集=木内涼子

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