大麻喫煙具、有害な重金属浸出の可能性 研究論文が指摘

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米国では2019年、ベポライザーと呼ばれる喫煙具で大麻やたばこを使用した2807人が急性肺疾患を発症し、少なくとも68人が死亡する問題が起きた。これは、大麻合法化に向けた大きな追い風になった。

米疾病対策センター(CDC)が「EVALI(電子たばこ・ベーピング製品の使用に関連した肺損傷)」と分類したこの疾患の原因は、ビタミンEアセテートという物質だったとの説が有力だ。ビタミンEアセテートは粘性のある食品添加物で、大麻オイルを薄めるのに使われており、被害者の肺組織はこの物質により覆われていた。症例はほぼ全て、大麻が合法化されていない州のものだった。つまり、ベポライザーでの大麻使用による問題は、違法市場の問題だったのだ。

ただ、ベポライザーに危険性がないわけではない。ベポライザーを使うことで、重金属が蒸気に浸出して肺に直接吸引され、重金属中毒を起こす可能性があるとした研究論文が最近、科学誌「毒物学の科学研究(Chemical Research in Toxicology)」に発表された。ベポライザーで大麻を吸うと、機器自体に含まれるクロムやニッケルなどの重金属を吸引してしまう可能性があるのだ。

電子たばこやニコチンのベポライザーに関する調査からは、喫煙者の血液中の重金属の水準が従来型たばこよりも高いことが示されてきた。だが、大麻のベポライザーにも同じことが当てはまるかどうかを調べた研究はあまりない。

今回の研究を行った米ワシントン州の大麻試験機関メディシン・クリーク・アナリティクス(Medicine Creek Analytics)の研究チームによると、ベポライザーを使用することで、クロムや銅、ニッケルに加え、少量の鉛やマンガン、スズが大麻オイルに流出。蒸気として吸入されることで、「政府機関が定める規制基準を上回る量の金属が急速に吸入される可能性が示された」という。大麻の花や濃縮物から出た煙や蒸気では同じ結果とはならず、ベポライザーの加熱装置が原因だったことが示唆された。

興味深いことに、大麻独特の味と香りを生んでいる植物由来成分のテルペンを加えることで、金属の浸出が改善されるとみられることも分かった。研究チームはその理由を特定しておらず、どのくらいの量のテルペンを添加すれば効果が生じ得るかも断定できなかった。

電子たばこに関する過去の研究からは重金属の混入が明らかになっており、構造が似ている大麻のベポライザーについても同様の結果が出たことはさほど驚くべきことではない。米規制当局は過去に、許容水準を超えた鉛がベポライザー本体や部品から検出されたことを受けて製品の販売を禁止したこともあったが、重金属汚染と直接関連した症例は今のところ報告されていない。

それでも今回の研究結果からは、大麻ベポライザーが「より安全な」選択肢であるとする支持派の主張が必ずしも正しくないことが示唆されている。

編集=遠藤宗生

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