中国経済、問題は不動産債務より「人口動態」

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中国についてはいろいろ懸念されることがあるだろうが、ひとまずこれ以外はすべて忘れてほしい。大問題は、中国がもっとも生産的な労働者を使い果たそうとしている、ということだ。

このままいけば中国の成長はやがて失速し、その伸びは横ばいに近いくらいまで鈍化することになるだろう。

フロスト・インベストメント・アドバイザーズは「中国経済の亀裂」と題した最近のリポートのなかで、「大半のアナリストは、中国は持ちなおすとみている。それは正しいかもしれないが、われわれは(中国経済の)土台にいくつかの亀裂が走っていると考える」と書いている。

もちろん、中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)の問題であらわになったように、中国の不動産債務が手に負えないほどのものになっていることは、すでに投資家の知るところである。また、中国が規制強化によってビジネスに対する締めつけを相当厳しくしていることも、多くの投資家は知っているだろう。ただ、中国は中央計画経済なのだから、それに驚く人はあまりいないはずだ。

いずれにせよ、フロストのリポートでも言及されているこの2つの問題は、中国政府が本気になれば比較的短期間で解決できるように思われる。中国の指導部は過剰規制については是正を望んでいるように思えないが、債務の急増に関しては、好むと好まざるとにかかわらず対応を余儀なくされることになりそうだ。

だが、このリポートで強調されているのは、中国がかかえるもっと深刻な問題である。何十年にもわたって少子化が続いた結果、中国の人口ピラミッドが若年層ほど広い「山型」から、比較的高い年齢層が膨らんだ「つぼ型」へと変わってきたことだ。

「中国の人口は高齢化が急速に進んでおり、もっとも生産性の高い労働力人口は15年もたてば退職する見通しになっている」とリポートは指摘する。「中国の出生率は過去20年で大幅に低下しており、数十年後には横ばいになる兆しがある」とも記している。添えられたグラフによると、中国ではすでに死亡率が出生率を大きく上回っている。

こうした人口動態が重要なのは、一国の経済が成長するのは人口が増えるか、1人あたりの労働生産性が上がるか、どちらかの場合しかないからだ。人口が減れば、経済成長はすべて労働者の生産性にかかってくる。

そして、そこが難しいところなのだ。大企業が中国への投資に慎重になり、中国政府が不要な規制を増やして成長を妨げるなかで、どうやれば生産性が向上するというのか。おそらくそれは不可能だ。人口も増えず、労働生産性も上がらないとなれば、世界第2の規模をもつ中国経済は遅かれ早かれ縮小に転じるということになる。

「多くの中国人は、快適な老後を送るのに必要な資産を築けないまま年老いることになりかねない」とリポートは警鐘を鳴らしている。

編集=江戸伸禎

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