中国は2016年に、一人っ子政策を廃止して2人まで出産を認めていた。急速な高齢化と労働年齢人口の減少に対応した措置だった。
もっとも、こうした少子高齢化自体、中国が約35年にわたって一人っ子政策を続け、みずから促してきたものだった。この傾向は今もなお続いており、クレディ・スイスによると、中国は2020年代を通じて労働者が毎年400万〜600万人不足する見通しとなっている。
これも見落とされがちだが、中国の強制的な家族計画政策は、男女比の不均衡という副作用ももたらしている。2009〜19年には、0〜4歳児の性比は女児100人に対して男児114人だった。自然な比率は女児100人に対して男児103〜105人とされ、それ以上は人為的な介入によるものと考えられる。
女性の数がこれほど少ないのは、中国で伝統的に女児より男児が好まれる傾向があるのに加え、共産党が定めた数を超える出産を望んだ女性が、性選択のための中絶や強制的な中絶を余儀なくされた結果だとする見方が多い。
また、ニューヨーク・タイムズなどの報道によれば、中国の2020年の出生数は1200万人と、大躍進政策のあおりで飢饉に見舞われた1961年以降で最低だった。つまり、中国では一人っ子政策から二人っ子政策に変更されたにもかかわらず、家族のサイズは大きくなっていないということだ。そして、少なくともコロナ禍の間、それは縮んでさえいる。
中国の多くの世帯は、さまざまな理由から、子どもをもう一人もうけたいとは思っていない。そのため、「三人っ子」政策がはたして人口の増加につながるのか、疑問を感じている人も少なくない。
一方、中国共産党は人口動態とは別に、家族に関する決定の統制には利害があると考えている。それが最もあからさまに示されているのが新疆ウイグル自治区だ。
中国共産党は新疆でウイグル族の家族のつながりを解体し、国家ベースの集団化や再教育によって再編成しようとしている。ウイグル族の女性は記録的な水準で不妊手術や中絶を強制されていると伝えられる。
今回の産児制限緩和については、期待のもてる動きとみる人も多いが、政府によって個人の自由が侵害される状態の継続と捉える人もいる。産児制限の撤廃でなく緩和は、共産党による個人の決定に対する統制が続くということだからだ。
中国政府が少子高齢化という形で以前の厳しい政策の結果に直面するなか、最も重要な結論は、たとえ政府が家族の人数をコントロールできる場合でも、そうしないほうが賢明かもしれないということではないか。人口動態の面で予想外の深刻な結果を招きかねないし、いずれにせよ人権や自由の制限はそれ以上に深刻な問題だ。
米国としては、中国共産党が続ける強制的な家族計画政策を支えるようなことをしてはならない。歴代の共和党政権は、中国共産党による人口抑制策に資金が流れているとみて、国連人口基金(UNFPA)への拠出を停止することが多かった。バイデン政権はUNFPAへの拠出再開を見直すべきだ。