──「バランス感」をどのようにして見極めているのでしょうか?
KPI設定を間違わないことが大事だと思います。例えば私たちは「登録生産者数」をKPIとして追いかけていません。
なぜなら流通額に対して生産者数が過剰に増えると、生産者さんは頑張っているのに個々の売上が減っていくという事象が起きるからです。
これでは「生産者のこだわりが正当に評価される世界へ」というビジョンを達成できません。なので私たちは「生産者一人当たり売上」を指標に置いています。たとえ生産者数が横ばいでも「生産者一人当たり売上」が伸びていけば、プラットフォームとしての流通額は伸びるという考え方です。
「プラットフォームの思想」に応じて、目標設定をしっかり定めるのがバランスをとる上で重要なのかなと思います。
参入障壁としての“コミュニティづくり”
──般的にプラットフォームが成長すると、質が低下するといった弊害も生まれたりします。その点はどのように工夫されていますか?
2段階あって、1つは入口時点。登録のタイミングで審査をさせていただいています。不当な価格競争が起きないよう、プロとして一次産業をやっている人しか登録できないようにしているのです。
2つめは登録後。例えば、配送の遅延発生など、生産者に対して評価項目を設けていて、評価基準に満たない状態が続いて改善が見られない出品者は、途中で出品停止にするといった対応をしています。
また、生鮮食品を取り扱う以上、どうしても一定の割合で食材が配送途中に傷むケースなどが発生してしまいます。私たちはそういったトラブルを隠すのではなく、あえて悪いレビューも消さずに、生産者さんのありのままの姿を見てもらえるよう意識しています。
すべてオープンにして生産者さんの真摯な対応を見せることができれば、逆に消費者さんに安心感を与えられると考えているのです。
※インタビュー記事は2021年7月22日現在の内容です
秋元里奈(あきもとりな)◎1991年生まれ 神奈川県相模原市の農家に生まれる。慶應義塾大学理工学部卒業。DeNAにてwebサービスのディレクター、営業チームリーダー、新規事業の立ち上げ、スマホアプリのマーケティング責任者を経験。2016年11月にビビッドガーデンを創業し、一次産業の生産者が、個人に直接商品を販売できる産直通販サイト「食べチョク」を立ち上げ。著書に「365日 #Tシャツ起業家 「食べチョク」で食を豊かにする農家の娘」(KADOKAWA)。