「人にはそれぞれの常識がありますよね。相手と接するとき、その人がまずはどんな常識を持っているのか、どんな考え方をするのかを知るようにします。対企業であっても同じです。それはこれまで幾度も痛い経験をしてきているからで(笑)。
なぜズレが生じてしまうのかと考えると、やはりそもそもの常識のベースが違うからなのです。いろいろなタイプの価値観に合わせ、相手が納得するようなコミュニケーションを選ぶこと。これは社会においても大切なことではないでしょうか」。
ロケットの開発現場の様子。さまざまな人が関わっている(写真はイプシロン4号機)
究極のロケットとは
小学生の頃、映画『スターウォーズ』シリーズやアニメ『宇宙戦艦ヤマト』に影響を受け、宇宙開発の道をめざしたという井元だが、実際に宇宙を相手に仕事を始めてその気持ちに変化はあったのだろうか。
「あの頃は、地球のレベルを超越した宇宙という世界に興味がありました。それが今だと、地球に気持ちが向かっています。宇宙開発は、普段の生活をよりよいものにするために行っていること。それにはやはり地球での生活がベースとなるので、最近はどう地球を守り大切にできるのかを強く考えています」。
最後の話題は、長年ロケット開発に携わってきた井元がめざす、究極のロケットについて。
「究極はロケットがなくても宇宙に移動できるようになることです。これは極論なのですが(笑)。現在のロケットは高性能で複雑なので、それをもっとシンプルにしていきたいと思っています。
何度も使えるようにしたり、どんどん打ち上げられるようにしたい。飛行機のような存在にしていくのが、めざすロケットの在り方ですね。
昔に比べると宇宙事業に参画する人たちの裾野が広まり、今後はもっと広がるはずです。これは多くの人たちが宇宙に興味を持ってくれているおかげでもあります。イプシロンはみなさんからの応援メッセージを毎回ロケットに入れているのですが、その応援の声は本当に力になるんです。
今回の5号機の打ち上げで、より多くの方に宇宙に興味をもってもらえると嬉しいですね」。
機体に貼り付けられた応援メッセージ。(写真はイプシロン試験機)(c)JAXA/JOE NISHIZAWA
●Profile
宇宙輸送技術部門 イプシロンロケット プロジェクトマネージャ
井元隆行
大分県出身。H-Ⅱロケットのエンジン・推進系開発、H-ⅡAロケットの研究立ち上げから試験機2号機打ち上げ成功まで全体とりまとめを担当後、イプシロンロケットの研究立ち上げから全体とりまとめを行い、2017年4月から現職。趣味は、テニス、コーヒー・本屋めぐり、サッカー日本代表テレビ観戦。
※著作権表記のない画像はすべて(c)JAXAです
JAXA’s N0.85より転載。
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