「今回の革新的衛星技術実証2号機では、高等専門学校が関わったキューブサットも搭載します。もしかすると、今後は中学生が開発した衛星も登場するかもしれない。そういう小型化の流れにイプシロンSを順応させることで、これから生まれる衛星をどんどん宇宙に届けていきたいと考えています」。
全国10校の高等専門学校が連携して開発した、木星電波観測技術実証衛星KOSEN-1。
ロケット開発は柔軟な発想力が必要だが、井元には大切にしていることがある。
「できない、とは考えないことです。『これはできない』『あれはできない』と考える人はたくさんいますが、私は『あれもできるのでは』『これもできる』と考えるように心がけています。
これは研究という分野の話だけではなく、どの世界でも同じなのではないでしょうか。いろんな発想があるなかで、できることを考えたほうが楽しいですし、可能性は無限にありますから」。
プロジェクトマネジメントに大切なこと
井元がプロジェクトマネージャに着任してから4年。マネジメントをするうえで心がけていることに、「モチベーションを高く維持すること」と答える。
「ロケット開発はものすごく大変です。人が足りないなかで、高度なことをたくさんやらなければならず、必然的に個々のレベルの高さも求められます。そして一番大切にしないといけないことに、モチベーションを高く保つことがあると思います。
『イプシロンの開発をしているんだ』という誇りや情熱をもつことが必要であり、そのためにも『イプシロンはいいロケットで、もっとよくしていくんだ』という強い気持ちが、モチベーションにつながると信じています」。
イプシロンロケット4号機の打ち上げが成功したときの管制室の様子。
さらに、「肉体的にも精神的にもすごく疲れるけれど、打ち上げが成功したときの喜びはものすごく大きく、これはなかなか形容できない大きな感動になります。若い開発者たちにはこの体験をしてもらいたいですね」と続けた。
実は、サブマネージャ時代もプロジェクトマネージャのつもりで行動していたという井元。「その立場で出来ていたかは別として、私がプロジェクトマネージャだというマインドで仕事を進め、常にそれくらいの仕事をするんだと思っていました」と振り返る。
それゆえ、チームのメンバーに求めるレベルも必然的に大きくなる。しかしそれは、ロケット開発の難しさを誰よりも理解しているからだ。
「それぞれがいい仕事をして、はじめてロケットを飛ばすことができます。その過程は疲れるかもしれないけれど、常に高みをめざして仕事をしてほしい。それはチームのためにもなるし、結果として本人のためになると思っています」。
では、プロジェクトの長として、いつも心がけていることはなんだろうか。