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2021.10.10 17:00

IPOで注目、デジタル特化の音楽レーベル「Believe」創業者の野望


原点はドットコムバブルの時代


クラシックピアノを学んだラデガイレリーは、1990年代後半のドットコムバブルの頃のニューヨークで、名門法律事務所のシャーマン・アンド・スターリングに務めていた時代に、起業家を志すようになった。彼のルームメイトは、ゴールドマン・サックスでの楽な仕事を捨てて、The Motley Foolのような新興企業でインターネットの夢を追いかけていた。

彼は弁護士を辞めて、デジタルメディアのコングロマリットに急速に変貌を遂げていたフランスの水道会社のヴィヴェンディ(Vivendi)に入社し、スポティファイが登場する以前にグレーゾーンの音楽配信サービスとして人気を博したMP3.comの買収を手掛けた。ラデガイレリーはその当時から、デジタル配信こそが音楽業界の未来だと考えていた。

そして、2人の共同創業者とともに、2005年にデジタルファーストの音楽レーベルであるBelieveを立ち上げた。その当時は、アップルのiPodが音楽消費を大きく変えようとしていた頃だった。創業当初の同社は、CDをリッピングしてMP3ファイルに変換し、オンラインで販売していたが、iTunesと提携したことで、Believeの知名度は上昇し、2014年には6000万ドルの資金調達に成功した。

ネットフリックスの初期の支援者で、2014年のBelieveの資金調達を担当したベンチャーキャピタルTechnology Crossover Ventures(TCV)のパートナーのジョン・ドーランは「ストリーミングは、私たちが考えていた以上のスピードで成長した」と述べている。

Believeは、創業当初にフランスのラッパーのMCソラー(Mc Solaar)と大手レーベルではほとんど前例がない50対50のロイヤリティ契約を結んだことで注目を集めた。今年の同社の収益の86%は米国以外からのもので、91%がデジタルのセールスだ。

Believeは2015年にニューヨークに本社を置くTuneCoreを買収し、大手に所属しない独立系アーティストの価値を引き出した。しかし、ラデガイレリーは、TuneCore がその価値をまだ十分に発揮していないと考えている。

「TuneCoreは現在、世界14カ国でしか提供されていないが、スポティファイは世界約140カ国をカバーしている。TuneCoreの前途には巨大な成長ポテンシャルが広がっている」とラデガイレリーは語った。

編集=上田裕資

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