米国中毒管理センター協会(AAPCC)に寄せられる相談件数は、パンデミック前をはるかに上回っており、保健当局がCOVID-19を巡る誤情報の問題との戦いを続ける中、懸念すべき状況が続いている。
AAPCCによると、COVID-19の治療薬になるとの誤った情報が広まった抗寄生虫薬「イベルメクチン」の誤用に関する相談は、今年初めから8月31日までの間に1143件にのぼった。特に8月には、家畜用のイベルメクチンを使用したことによる相談が459件を数え、2019年と2020年の年間相談件数をいずれも上回った(2019年の同時期と比べ、184%増加していた)。
また、消毒剤と手指消毒剤、漂白剤の誤用についての相談は、年初から9月6日までにそれぞれ、2019年の同日までと比べて23%増(報告件数は約1万7000)、58%増(約2万3000件)、7%増(約3万件)となっていた。
相談があった誤用は消毒剤と漂白剤の大半、手指消毒剤のほぼすべてが、乳幼児(0~5歳)によるものだった。だが、イベルメクチンの摂取は、多くが成人(特に40~59歳)によるものだったという。
パンデミックを巡るさまざまな側面が、こうした相談の急増につながっている。「清潔にすること、消毒することを心掛けるように」との呼びかけが、子どもたちが洗剤類による事故に遭う機会を増やす結果となっている。
洗浄剤や殺菌剤は皮膚の炎症や損傷を起こす危険性があるほか、別のものと混ざれば、さらに危険なものになりうる(漂白剤と酢が混ざって塩素ガスが発生すれば、命に関わる場合もある)。
また、高濃度でアルコールを含む手指消毒剤を幼い子どもが誤飲した場合や、メタノールが使用されている製品を誤って飲んだ場合なども、死亡につながる恐れがある。
前大統領も誤用を「後押し」
COVID-19の治療薬や予防薬として未承認の薬品を摂取したことによるAAPCCへの相談は、イベルメクチン以外によるものも数多く寄せられている。
ドナルド・トランプ前米大統領が抗マラリア薬の「ヒドロキシクロロキン」について記者会見でコメントした後には、この薬の誤用に関する相談が倍増。数週間にわたり、多数の例が報告された。
また、トランプがCOVID-19の治療の目的で漂白剤や消毒剤を体内に注入することについて言及した後にも、これらを誤飲したとの相談が急増していた。
危険性のある物質が誤った方法で使用されたケースのすべてが、AAPCCのデータに含まれているわけではない。実際に発生した事故は、報告された件数をさらに上回っていると考えられる。