しかし、新たな競争に直面するユアンは、「私たちが傲慢になって、他人の意見に耳を貸さなくなれば問題だが、顧客のニーズにフォーカスし、常に危機感を持っていれば大丈夫だ」と話す。
ユアンはここ数カ月の間、マイクロソフトのサティア・ナデラやセールスフォースのマーク・ベニオフ、HPのエンリケ・ロレスなどのCEOと面談を行い、アドバイスを受けたという。「私たちは、顧客に喜んでもらうために何が出来るかを話し合った」
ウォール街の反応は気にしない
Zoomは2019年にIPOを行ったが、ユアンは社員たちにウォール街の反応を気にしないように伝えている。彼は、株価がほぼ横ばいの状態で約10年を過ごした後、過去2年間で急激な上昇を遂げた半導体メーカー「エヌビディア」の例を参考にしているという。
ユアンは、昨年の同社のカンファレンスに、エヌビディアのジェンセン・フアンCEOを招くことが出来て感動したという。「私は10年前にZoomを始めたときよりも、今のほうが仕事にエキサイトしている。だからこそ、短期的な株価の動きは気にならない。株価は、私たちの会社の未来を変えたりしない」
ユアンによると、Zoomの未来を変えるのは、彼らのプラットフォームの上に独自のアプリを構築する企業が増えることと、彼が「最後のピース」と呼ぶ新たなエンゲージメントセンターになるという。
しかし、ビデオ以外の要素も重要になっていくとユアンは考えている。「家でもオフィスでも、テスラの車両の中での移動中でも、様々な形のコミュニケーションが可能になる。その上で、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)の活用が進み、AI(人工知能)を用いたライブ翻訳の導入も進んでいく」と彼は話した。
最近は、Zoom疲れを感じる人が増えているが、ユアンは顧客たちが長期にわたるハイブリッドワークに適応するために、ビデオチャットをしない日を設けるなどの対策を講じていると指摘した。彼は、バーチャルオフィスでデジタルアバターが果たす役割にも期待している話した。
Zoomは現在も昨年から始めた取り組みの、学校向けの無料サービスを提供し続けているが、ユアンは自身の2人の子供たちが対面での授業に戻れたことを喜んでいる。「子供たちが学校に戻り、リアルな環境でコミュニケーションをとれるのは、とても嬉しい」と彼は話した。