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2021.09.02 11:00

LVMH会長が「カルフール」の投資から撤退、売却交渉中止受け

ベルナール・アルノー(Photo by Jacopo Raule/Getty Images)

ベルナール・アルノー(Photo by Jacopo Raule/Getty Images)

U世界第3位の富豪で、LVMHグループを率いるベルナール・アルノーは、8月31日にフランスのスーパーマーケットチェーン「カルフール」の残りの株式を売却し、2007年の最初の投資から14年後に、同社への投資から完全に撤退した。アルノーの持ち株会社のフィナンシエールアガシュ(Financière Agache)は、カルフールの5.5%の株式を1株あたり約19ドルで売却し、税引前で約8億5000万ドル(約935億円)を入手した。

しかし、この投資は収益性の高いものではなかった模様だ。2007年3月にアガッシュの親会社であるグループ・アルノーは、投資会社コロニー・キャピタルおよびアクソン・キャピタルと共同で、推定43億ドルから50億ドルでカルフールの株式の9.8%を購入していた。

パートナーの2社は2017年1月にエグジットを行い、アルノーと彼の会社は当時約16億ドルの価値があった8.7%の株式を保有することになった。アルノーは、カルフールの配当を現金ではなく株式で受け取ることで、その後もカルフールの株式を追加取得していた。

カルフールの株価は、2007年3月から2017年1月の間に60%近く下落し、その後も、主力のフランス市場での競争が激化する中で、何人ものCEOが交代したことで、さらに26%下落している。2019年に、アルノーはカルフールの取締役を退任し、そのポジションを息子のアレクサンドルに譲った。アルノーの広報担当者は、今回の株式売却についてコメントに応じていない。

アルノーは、2020年9月にカルフールの株式の売却を開始し、その際に約4億1000万ドルで2500万株を処分し、持ち株比率を8.6%から5.5%に下げていた。彼が同社への投資から撤退したのは、カナダのコンビニエンスストア運営大手でサークルKの親会社として知られる「アリメンテーション・カウチタード」が200億ドル規模の金額で、カルフールを買収する話が浮上したものの、フランス政府の反対により中止になってから8カ月後のことだ。

2012年に290億ドルだったアルノーの保有資産は、その後6倍に上昇しており、今回のカルフールからの撤退は、彼にしては珍しい投資の失敗だ。近年のアルノーの資産の伸びの多くは、彼が47%を保有するLVMHの株価がパンデミック後に急上昇したことによるものだ。

クルーズ船への投資で6億ドルの利益


アルノーは、2021年の6週間を世界トップの富豪として過ごしている。彼の保有資産は、2021年8月に過去最大の2010億ドルに達し、2020年3月の市場の暴落の際の保有資産760億ドルから、165%近い増加となっていた。

彼はまた、一風変わった投資先からもリターンをあげている。2020年5月に、アルノーが支援するプライベート・エクイティのL Cattertonは、クルーズ運営会社ノルウェージャンクルーズラインの債券に4億ドルを投資したが、10カ月後の2021年3月に、ノルウェージャンは10億ドル以上でその債券を買い戻し、アルノーと彼のパートナーは6億ドルの利益を得ていた。31日のカルフール株の売却は、アルノーの保有資産にほとんど影響を与えなかった。

フォーブスはアルノーの現在の保有資産を1840億ドル(約20兆240億円)と試算している。

編集=上田裕資

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