タリバンの「人権尊重」という言葉が信用できない理由

タリバンは1996年末にアフガニスタンの大部分を占領し、人々に厳格なイスラム教のシャリーア法の下での生活を強要した。女性は通学や就労が許されなかった(アフガニスタン・ヘラート、1996年6月)(Getty images)

タリバンがアフガニスタンを支配した今、すべての女性が危険にさらされているのは、火を見るよりも明らかだ。

タリバンは、アフガニスタンの首都カブールを占拠した直後、女性の権利を尊重すると発表した。この宣言は懐疑的に見られている。タリバンは、女性や少女はもちろんのこと、誰の人権に関しても、尊重してきた実績がないからだ。

また、彼らのいう権利保障は条件付きだった。タリバンは、「シャリーア(イスラム法)の枠組みの範囲で」女性の権利を尊重すると述べたのだ。この条件は問題を複雑化し、女性の権利が本当に尊重されるかどうかを、さらに疑わしくする。

シャリーアは、国際的に認められた人権水準としばしば相容れない。シャリーアにはさまざまな解釈があり、互いに矛盾することも少なくないが、タリバンは政権を握っていた1996年から2001年のあいだ、極端な解釈のシャリーアを実践した。女性が教育を受け、職に就き、男性の付き添いなしに外出することを禁じ、公共の場では全身を覆い隠すよう要求したのだ。

女性裁判官や女性弁護士は、高い地位を持っているうえに、長年にわたってタリバンの訴追に関わってきた人もいるため、非常に危険な状況にある。

宗教的マイノリティ


アフガニスタンでは宗教的マイノリティが、さまざまな集団から差別や迫害を受けてきた。2021年5月に米国務省が発表した、2020年度版の信仰の自由に関する国際報告書によると、シク教徒、ヒンドゥー教徒、キリスト教徒およびその他の非イスラム教徒からなる宗教的マイノリティは、アフガニスタン国内で嫌がらせを受け続けている。

「バハイ教徒やキリスト教徒は、常に信仰が露見することを恐れながら生活しており、自身の宗教的アイデンティティを他人に明かそうとしない」。キリスト教への改宗者や、キリスト教を学ぶ人々にとっては、さらに状況は深刻であり、彼らのコミュニティは絶えず脅威にさらされている。

シーア派イスラム教徒、なかでもシーア派のハザラ人は、「ISIL-K(イスラム国ホラサン州)」をはじめとする複数の集団による暴力の標的になっている。ISIL-Kは、「IS(イスラム国)」の支部を自称する集団で、アフガニスタンを中心に活動している。

人権擁護活動家


タリバンが勢力を伸ばすなかで、複数の国連任務保持者が、人権擁護活動家の緊急保護が必要だと訴え、以下のように警告した。「“パックス・タリバン”(タリバンの平和)との共存を考えている各国政府は、それがアフガニスタンの人々の生活・権利・文化を破壊する重大な誤りであることに気づくべきだ。それは、過去20年のあいだに国際支援と現地の人々の不断の努力によって文化と教育の面で達成された重要な進歩を骨抜きにしてしまう重大な誤りだ」

危機にさらされるその他の人々


タリバンが政権を奪取した数日後、ノルウェー国際分析センター(RHIPTO)は、タリバンが、前政権やNATO、外国政府などの協力者とみなした人々を次々に拘束していると報告した。彼らはみな、タリバンの手で過酷な処罰を受けるおそれがある。

状況は明らかだ。タリバンが政権を握った今、私たちは生命と安全を脅かされているすべての人々の支援に、重点的に取り組むべきだ。アフガニスタンの情勢が悪化するなか、国際社会は支援活動を強化しなければならない。「人権は尊重される」という口約束を真に受けることはできない。人権問題に関して、タリバンの信用は皆無なのだから。

翻訳=的場知之/ガリレオ

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