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2021.09.04 12:00

会津の気候風土を酒で味わう 「土産土法」とテロワール

「花咲境22」番地の田んぼで稲の説明をする「高橋庄作酒造店」の高橋(2021年7月)

「花咲境22」番地の田んぼで稲の説明をする「高橋庄作酒造店」の高橋(2021年7月)

ワインにおける「テロワール」とは、ぶどうの栽培環境がワインの品質や味わいを左右するということを意味する。

では、日本酒においてはどうだろうか。

糖度の高いぶどうに酵母を加えて発酵させる「単発酵」のワインと違い、日本酒の発酵は複雑だ。米を酵母が分解できないため、「並行複発酵」と言って麹菌による糖化と酵母によるアルコール発酵を同じタンク内で同時に進行させる。


枯山水のように美しく広げられた米麹(2019年2月)

さらに、水を一切使わないワインに比べ、日本酒は仕込みに使う水の他に「割水」として原酒に加水して味わいやアルコール度数を調整する。「日本酒は8割が水」とも言われ、原料米が日本酒の味に影響する割合はワインに比べると小さいと言えるだろう。

「同じ醸造酒でもワインはぶどうの品質が酒質の8割を占めますが、日本酒の味わいは米の品質よりも、『誰がどこで造るか』によって決まる割合が大きい。品質の差どころか、田んぼごとの差はほぼ出てこないはずなのです」

そう話すのは、日本酒「会津娘」で知られる福島県会津若松市「高橋庄作酒造店」の蔵元杜氏・高橋 亘。「僕の感覚ではお米の品質による影響はせいぜい2割、良いとこ3割くらいかなと思っています。それでも、お米による違いはある。お米という土台の違いによって、その上に建つものが変わってくるのです」。

こうした考えを突き詰めるために、1枚の田んぼでとれた米ごとに仕込む圃場限定純米吟醸酒「会津娘 穣(じょう)」を造り続けている。

会津の気候風土を酒で味わう


「穣」の原料米はすべて酒造好適米「五百万石」で、いずれも蔵の半径3キロ以内にある自社田で収穫したもの。たとえば、「羽黒46」番地の田んぼは、表土がとてもきめ細かく柔らか。大粒でやや硬質、緻密な味わいの五百万石が育つ。「花坂境22」番地の田んぼは、東西風抜けが良く、日照も十分。やや早熟だがしっかりとした丈夫でツヤ・粒ぞろいの良い五百万石が育つという。


「羽黒46」番地の「五百万石」(2021年7月)

なぜ五百万石を使っているのか。ここに高橋庄作酒造店の神髄がある。高橋の父・健治の代から目指しているのは「土産土法」。その土地でとれた食材はその土地に伝わる食べ方で食べるのが一番理にかなっているという意味の言葉だ。
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文=柏木智帆

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