普及が進むオーガニックワイン、その未来は?

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ワイン生産を含む農業では、天気が重要だ。有機生産者は悪天候の影響(特にカビによる病気)への対処法が限られているので、より大きな被害を受ける恐れがある。雨が多く病気がまん延する厳しい年が続けば、有機栽培への転向を考えている人は思い直すかもしれない。転向途中の生産者が有機農法を諦める可能性もある。厳しい気候のワイン生産地では、合成薬品の使用は避けられないと考える生産者もいる。

気候による影響は、フランスを例にとれば分かりやすい。温暖で日照時間が長いプロバンス地方では、ブドウ畑の面積の24%が有機農法だ。ローヌ渓谷やルシヨン地方でも18%に上る。一方、寒冷で雨が多い北部の大西洋沿いではこの割合ははるかに低く、ボルドー地方は9%、シャンパーニュ地方は3%、コニャック地方はわずか1%だ。

病気や害虫対策で使われる合成薬剤の中には、一部の国や欧州連合(EU)全域で使用が禁止されているものもあるため、有機農法の必要性を感じる生産者が今後増えるかもしれない。合成殺虫剤の使用規則は厳格化の一途にある。フランスのブドウ畑付近に住む住民からの苦情により、住宅地付近での薬品散布に関する新たな規則がここ数年で次々と制定されている。

ただ、何らかの製品の散布は誰もが行っている。有機農法は合成の殺虫剤や除草剤、肥料を一切使わない農法であるため、自然のメカニズムを使って農産物を守る効果的な方法が必要となる。

植物の成分やハーブティーなどが使われているが、その効果は限定的だ。だが、細菌やウイルス、カビなどの微生物を由来とし、害虫や病気と闘う自然由来の製品が次々と投入されており、有機生産者はこうした製品のすべてとはいかないものの、多くを使用できる。こうした自然製品が効果的であることが分かれば、より多くのワイン生産者が有機栽培に転向するかもしれない。

薬剤の散布を完全になくすことはできない。だが、散布を減らすことは可能であり、今後はそれがさらに容易になるかもしれない。新たに登場したカビ菌耐性品種(PiWiとも呼ばれる)は、交配種ではあるが、ワイン造りに適しているビティス・ビニフェラ(Vitis vinifera)の割合が高い。フランスの伝統的なワイン生産地の生産者や消費者が、こうした新たなブドウの品種を受け入れるかどうかは分からない。カビ菌耐性品種は、現時点ではフランスの原産地呼称保護ワインでの使用を許可されていないが、それも時間の問題だ。

この分野で他の先を行っているのは、ブドウの名前がそれほど大きな重要性を持たない地域だ。コニャック地方では、2030年に耐性品種を大規模に使用する見通しで、その結果、合成薬品の散布は大きく減るだろう。ラングドック・ルーションも、導入に向け暫定的な措置を取っている。

ビティス・ビニフェラの品種についても、できることは多い。ボルドーでは、暑さと干ばつに耐えられるポルトガルのブドウを試している。ブルゴーニュでは、改良した台木やクローンに従来の品種を組み合わせる研究が進んでいる。

編集=遠藤宗生

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