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Photo by Kevin Frayer/Getty Images

中国の習近平国家主席は先週の演説で、中国では「ごく少数の者だけが富む」ようになってきていると述べ、国全体で「共同富裕」を促進していく考えを強調した。

新華社によると、中国共産党総書記の習は主宰した党中央財経委員会の会合で、共同富裕とは「全人民の間で物質的にも精神的にも豊かさが共有されること」だと説明した。

そのうえで、この目標を達成するために、過剰な所得を調整し、中間所得層を拡大し、不正な所得を取り締まり、社会の公平・正義を実現していくという政治目標を掲げた。つまり、習は国の富を富裕層から貧困層へ再分配する意向を示したということだ。

報道を受けて、中国人への依存度が高まっている高級品市場は動揺した。ウォールストリート・ジャーナルによると、LVMHモエヘネシー・ルイヴィトン、ケリング、エルメス、リシュモンの株式は大きく売られ、合計で600億ユーロ(約7兆7000億円)にのぼる時価総額が失われた。

ベイン・アンド・カンパニーによると、現在のペースで成長が続けば、中国は2025年には世界最大の高級品市場になる見通しとなっている。だが、高級ブランド品を持つことが富裕層の証になっている中国で今後、過度に裕福な人々に厳しくあたる風潮が強まれば、高級ブランド業界の目算は狂うことになるだろう。

ジェフリーズ・ファイナンシャル・グループは、中国政府の標的になるのは11万人ほどの少数の非常に裕福な個人だと指摘している。だが、こうした超富裕層は中国の高級品販売額の4分の1をもたらしていると推定されている。

ジェフリーズは、「党の否認」によって奢侈が抑えられるだけでなく、所得水準がより下位の消費者も支出を見直すことになりそうだとの見方も示している。

豊かさを示すシンボルとして、中国の大勢の消費者が誇らしく身につけてきた高級ブランドロゴは、この先、「共同繁栄」を気にかけないという意思表示として標的にされるかもしれない。

習のメッセージには、「中国式近代化」と呼ぶ社会主義的な行動様式を強化するという意志も込められている。

高級ブランドは西側の発明品であり、全人民の繁栄という中国の社会主義的な政策と真っ向から対立する、欧米の能力主義的な価値観を表すものでもある。高級品の輸入に国の扉を開いておくことは、どうやっても習の目標には役立ちそうにない。

中国政府はこれまでも汚職対策の一環で、役人への高級な贈り物の禁止など、ぜいたくを戒める措置を打ち出していた。ベインによると、2013年にはこうした綱紀粛正のあおりで高級品の売り上げが落ち込み、過去3年平均10%ほどだった中国高級市場の成長率は2%に急減速している。

編集=江戸伸禎

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