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サッポロの看板商品のマーケティングを担当する齋藤愛子(左)と沖井尊子(右)

ロングセラーブランドが、若年層をターゲットに据えて、リブランディングを行う「若返り戦略」は、新規顧客を開拓するマーケティング施策の新しい勝ちパターンだ。

若者のビール離れが叫ばれるなか、サッポロビールの主力商品「サッポロ生ビール黒ラベル(以下、黒ラベル)」と「ヱビスビール」は、大胆なリブランディングを実施。間口を広げることに成功したが、ブランドイメージの転換は、一朝一夕にできることではなかった。

異例の大抜擢を受けて着任した、黒ラベルとヱビスビールのブランドマネージャを務めるふたりが考えるマーケティングの根幹にあったのは、年齢や性別にとらわれないターゲット像のつかみ方だった。

「男は黙って」「部長のビール」からの脱却


「入社以前から、黒ラベルは、数あるラインナップの中でも『トンマナが違うビール』だと思っていました。シュッとしているというか、シンプルでオトナな感覚がありますよね。歴代のブランドマネージャも、黒ラベルのイメージそのままの方ばかりでした。なので、まだ大人に憧れている年齢の私の着任が決まったときは、人違いかと思ってしまったほどです。同時にこれには、ブランドと消費者に近くするという、会社の意図とミッションを感じました」

こう話すのは、黒ラベルのブランドマネージャを務める齋藤愛子だ。「ホワイトベルグ」や「赤星」の愛称で親しまれる「サッポロラガービール」のブランドマネージャを経て、2020年に現職に就いた。

黒ラベルは、「男は黙ってサッポロビール」に代表される、古き良き時代のCMの印象が強かったというが、2010年に放送を開始したCMシリーズ「大人エレベーター」を皮切りに一新した。味や効能を訴求するのではなく、ビールに独自の世界観をまとわせて、広い世代をあえて取りに行った。これが、既存客だけでなく、世界観でビールを選ぶ傾向にある若者にも響き、今では20〜30代からの支持を集めている。

齋藤愛子が話す様子
黒ラベルのマーケティング担当齋藤愛子

34歳という異例の若さでブランドマネージャに抜擢された齋藤の強みは、ターゲットと同じ目線に立てることだろう。

「施策を考えるときは、いつもお客様に自分を憑依させます。やはり、自分がワクワクできない施策は、誰の心も動かせないじゃないですか。もちろん、マーケティングのフレームワークは駆使しますが、ロジカルだけじゃないエッセンスが必要です」(齋藤)

敷居の高さを払拭したヱビス


同じく主力商品で、昨年130周年を迎えた歴史あるヱビスビールも、2021年にリブランディングに踏み切った。ブランドマネージャを務める沖井尊子は、黒ラベルの齋藤と同じく2020年に就任した、若手のマーケター。それまでは、ヱビスビールの味やパッケージを企画する商品開発を担当していて、就任が決まったときのことを「長年近くで見てきたブランドの『真ん中の人』になったという感じでした」と振り返る。

 

文=井上榛香 写真=西川節子

ブランディングマーケティング

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