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2021.07.30 10:00

コロナ禍の1年で60代以上もデジタル化した、米国の購買行動

「カーブサイド ピックアップ」はもう定番に。photo by Dimensions / iStock

第1回第2回の記事では、2016年後半から2019年の間に「米国の大手流通に起きたデジタル化」について説明した。第3回目のこの記事では、大手流通のデジタル化により、消費者の購買行動がどう変化したかを説明したい。

進むConsumer Adaptation


1回目、2回目の記事の振り返りにもなるが、2019年末の時点で、米国の大手流通は「30年の変化が3年で」というフレーズで表現される程の急速な変化をみせ、デジタル技術の導入による店舗とオンラインストアの融合が進んだ。その融合により、BOPIS(Buy-Online- Pickup- In-Store)と呼ばれる、オンラインで事前購入して店舗で受け取る仕組みが急激に大規模に導入された。

2019年末の時点では、売り上げトップ10の流通全てにBOPISの仕組みが試験導入を終え、本格導入されていた。BOPISの中でも、事前に注文した商品をドライブスルーのように車に乗ったまま受け取る「カーブサイドピックアップ」が、需要の急増に一番対応できる仕組みとして主流となっており、Walmart、 TargetといったGMS(General Merchantize Stores:総合スーパー)もこの仕組みを全国的に導入していた。コロナが本格化する直前に、流通のデジタル化とECの仕組みは、米国の大手流通ではすでに用意されていたのである。

コロナの影響が本格化する直前、2020年1月にニューヨークでNRF (National Retail Federation:全米小売業協会)が主催するコンベンションが開催されていた。メインの話題は、大手流通を中心としたデジタル化が進んだことと、それを加速する技術やサービスの話だった。2020年のNRFコンベンションの期間中に、流通向けのコンサルティングやマーケティングサポートをしている数社から話を聞いたが、導入されたサービスを消費者が日常的に使うようになるまで、4〜5年かかるだろうというのが大体の見方であった。アーリーアダプターや30代前半くらいまでのミレニアル世代くらいまでは使い初めても、「僕らの両親の世代、60代以上がこうしたデジタルの仕組みを使うまでになるには、数年かかるね」という意見が多く聞かれた。

2020年NRF開催から間もなく、米国の新型コロナ感染は深刻化した。それから1年後、2021年1月のNRFまでの間に、流通のデジタル化はどう進んだのだろうか? 結論から言うと、コロナの影響により、大手流通の店舗を利用する消費者の適応、英語で言うと「Consumer adaptation」が一気に進んだのである。2021年1月、オンラインで開催されたNRFで頻繁に聞かれたフレーズが、「5年の変化が5カ月で起こった」であった。この変化とは、流通店舗の利用者の行動変容のことを指していた。

この「5年の変化が5カ月で」のドライバーになったのは、グローサリーと呼ばれる、生鮮品を含めた食料品カテゴリーに関しての、購買行動の変化であった。

まず、グローサリーをオンラインで買う消費者の属性が大きく変化した。年齢にかかわらず、どの消費者も日常的にオンラインでグローサリーを購買するようになった。通常、新しいデジタル化の仕組みは、デジタルに興味がある層から徐々にひろがっていく。アーリーアダプターが使い始め、その後にミレニアル世代、40〜50代と浸透していき、シニア層にまで浸透するのは最後であるというのが一般的である。
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文=射場瞬 前橋史子

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