「環境ビジネスが来る」と直感して国内向けの産業用太陽光パネルの設置販売に切り替えてから、東京進出もできるようになった。2010年にパネル一体型のフィルム型ソーラー(厚さ1ミリの超軽量で、曲げられるシート状のもの)を開発すると、各メーカーやコンサルタントなどが全国から噂を聞きつけてやってきた。さらに途上国での需要を知り、ミャンマーに進出しようとしたけどうまく行かず。
アフリカはどうか?と声がかかって、好奇心だけはあるんでとりあえず見てみっか、と。ウガンダに初めて行った時はそりゃ衝撃でしたよ。電気はなく、カオスな世界。明るい未来と勝機を感じたね。日本で産業用太陽光パネルを販売し、その利益をどんどんアフリカへ持っていくわけですよ。それが今の活動に繋がっている。
2018年9月、ベナン共和国で電気のなかった小学校にソーラーパネルを設置。記念のセレモニーで
──今日もアフリカ出張中(取材時は7月上旬)とのことですが、今回はどんな目的で行かれていますか。
いまは仕事のうち100%が、アフリカ途上国向けに展開する一般社団法人「GOOD ON ROOFS」に関連する事業。ベナン、コンゴ、ブルンジ、ブルキナファソ、ナイジェリア、ウガンダで展開していて、ガーナとセネガルも進出予定。
実は今回の出張は、近年のプロジェクトの中で一番大事。ことし春からGORA(GOOD ON ROOFS AFRICA)という新会社をベナンで設立して、現地の政府と組んで、学校の屋根に太陽光パネルを設置し、充電用のパワーステーションをつくり、各家庭にランタンを低額で貸し出す「プロジェクトルミエール」を本格始動するため準備している。九州とベナンの人口はほぼ一緒だけど、経済規模は3%しかない。だけど学校の数は3.5倍で、生徒数も多い。今後が楽しみでしかない。
──現在56歳の川口社長。これから挑戦したいことは。
人生の中でいまが一番面白いよ。一般的にはあと4年で定年だし、50代で役職定年になる人もいる。そんな中、俺はアフリカで現地の人を育てなきゃと、この1カ月で4人を雇用した。
アフリカはビジネスのブルーオーシャン。アフリカ側がオーナーシップをとって、日本の技術を活用する時代がきた。アフリカにおける日本の若者のビジネス交流にも力を入れたい。後からくる日本人がビジネスをやりやすいように先駆者になりたいね。
日本で悩みやモヤモヤを抱えている人には、アフリカの大地を一度踏んでみたら?と伝えたい。赤い大地の上に立って、365度周りを見回してごらん。経済的な豊かさはなくても、心は豊かそうな人たちがいる。お金では人の幸せは買えないわけ。何のためにガリガリやってきたのか、と考えさせられると思うよ。ぜひ一度来てみてください。
川口の人生を変えたアフリカ。2018年、ベナン・ベテクク村の子どもたちとともに
川口信弘◎1965年佐賀県生まれ。1930(昭和5)年創業の屋根の設計施工会社、川口スチール工業3代目として社長に就任。その後、会社を発展させて軽量の太陽光パネルを設計し特殊架台の特許を取得。国内の再生可能エネルギーの普及とアフリカなど発展途上国の地方の電化を進めている。2019年この活動を飛躍させるために一般社団法人GOOD ON ROOFSを設立し専務理事を務める。