食糧問題をフードテックで解決する
NO YOUTH NO JAPAN大林香穂(以下、NYNJ大林):今後、世界ではますます人口増加が見込まれ、国連によると2030年には85億人を突破すると予測されています。このような社会になったとき、いまの食糧供給の方法では追いつかないのでしょうか。
白井:人口に比例して肉食も増えるため、絶対的に肉が足りません。実際、アメリカ48州(アラスカ、ハワイを除く)の土地の4割ほどは家畜を育てるために使われています。これはインドの面積とほぼ同じです。牧場をつくるために森林を伐採し飼料の大豆を作る。このままでは土地もエサも足りないし、気候変動で穀物も取れないとコモディティ(商品先物取引)価格が上がってしまいます。フードロスも問題ですね。多くのCO2を出して食べ物を作り、残したものを処理するために再度CO2が発生しています。
こうした現状を変えるためにも、代替肉の開発やフードロスの課題解決に向けて、食とテクノロジーを組み合わせる「フードテック」の役割は重要で、関連の市場規模は700兆円と言われています。環境問題の解決と経済発展などすべて含めて考える必要があり、政策上デカップリング(経済成長とエネルギー消費量増大の比例的な関係の解消)をどのようにやるかが大きな課題です。
パティとソース付きの「NEXTバーガー」。新バージョンの販売は7月前半予定
NYNJ三村:代替肉はどのように作られているのですか。白井さんの企業でも3年かかったと伺っていますが、どういった工程を経ているのでしょうか。
白井:我々が主に使うのはバイオテクノロジーとメカトロニクス(機械工学)ですね。最初に植物性タンパク質のデータを分析し、そのあと機械工学を用いて特殊な装置で熱学や熱勾配・タンパク質の水分量・圧力やスピードといった値を定義していきます。その定義で出てきた肉が分子結合されて、チップが成形され、そのチップを加工するという流れです。その後、実際にこの素材にどのような調味料が必要か分析します。
テクノロジーを掛け合わせながらビッグデータ化していくと、「食べ物はデータなんだ」と分かってきますね。食事は脳の影響をとても受けていて、一緒に食べる人や状況で味は変わるんです。脳は奥が深いです。食べ物を追求するこの仕事は、時間もお金もかかります。まるで海のなかに貝殻を見つけるような仕事ですね。なので、いまこうしてみなさんに知って頂けて嬉しいです。
NYNJ大林:動物性の肉を提供する店舗もSDGsを企業理念に掲げていますが、正直矛盾を感じることもあります。私たち消費者は「肉ビジネス」に対してどう向き合っていくべきなのでしょうか。
白井:確かにいま、企業は事業内容とSDGsを何とか結びつけないといけないという風潮があります。ただ消費者の皆さんには、HPや記事、実際の商品などからその企業がどんな取組みをしているかしっかり見てほしいです。その活動が「お飾り」なのかすぐに判断できますし、そのうえで消費の選択をしてほしいと思います。
NYNJ大林:環境、社会、ガバナンスの3つの観点から企業を分析して投資する「ESG投資」とも関連があると思いますが、どうお考えですか。