なかでも規模が大きくなっている活動の一つは、コロラド州デンバーの飲食店経営者、ステファニー・ボナンが始めたもの。Change.orgには「わたしたちのチームと同様に、わたしの一家もお店からの収入をすべて失いました。ですが、事業主や自営業者は失業手当を請求できません。これが米国のいま置かれている状況です」と苦境をつづっている。
ボナンは議会に対して、成人に2000ドル、未成年に1000ドル(約11万円)をただちに支給し、さらに新型コロナのパンデミックが収束するまで、定期的な給付を続ける案を支持するよう呼びかけている。
米議会では、議員75人あまりがパンデミック収束まで国民に毎月2000ドルを直接給付することを求めている。民主党のイルハン・オマル下院議員とほかの議員55人は今年1月、ジョー・バイデン大統領に連名で手紙を送り、継続的な直接給付への支持を訴えてもいる。
しかし、バイデンも大半の議員も、継続的な給付はおろか、1回きりの4回目の給付にも消極的なのが実情だ。理由はいくつもある。たとえばバイデンの場合、新たなインフラ投資計画の実現に力を入れているという事情がある。
また、バイデンも議会も経済が上向いていると強調している手前、新たな現金給付を支持するのは整合性がとりにくい。新型コロナによって経済的に困窮している米国人が今もなお、たくさんいるのは確かだが、被雇用者数の増加や失業率の改善傾向、高いワクチン接種率などは米経済の回復を示すものになっている。
さらに言うと、これまでの直接給付は所得などによって対象者が限定されていたのに対して、ボナンの請願ではそうした制約を設けず、すべての米国人に支給することを求めている。これはバイデンや議会にとっていちだんとハードルが高いものだ。
一般に請願が議会に影響を及ぼすことはあまりないが、いくつかの活動で十分な数の署名を集めれば、全体として少なくとも一部の議員に対する圧力にはなるかもしれない。何百万人、あるいはそれ以上の米国人が追加の直接給付を訴えたとき、議会はその声に耳を傾けるだろうか。