航海法改訂は、航路の実質支配のため?
近年、中国は実質支配する岩礁に空軍基地やレーダー拠点を築いている。その動向は世界の注目を集めてきたが、今回の監視プラットフォームはまだそれほど注目されていない。
プラットフォームは紛争多発地域に設置されている。この地域の紛争について取材を続けている〈インド太平洋ニュース〉によれば、プラットフォームの設置地域では中国とヴェトナムのあいだでたびたび衝突が起きているが、ほとんど報道されていない。
先ごろ中国は航海法を改訂し、この地域を“沿岸水域”とした。「中国はこの地域の航路を実質支配しようと躍起になっている。沖合水域を沿岸水域に変更することで、ヴェトナムに対して正当な支配権を主張しようとしている可能性がある」と〈インド太平洋ニュース〉は見ている。その件と直接関係があるのかどうかは不明だが、監視システムが南シナ海での存在感をアピールする象徴であるのは間違いない。
監視システムの増強を通じ、南シナ海における存在感をアピールする中国(Getty Images)
S・ラジャラトナム国際研究員のリサーチフェロー、コリン・コー博士は次のように語る。「ただし、単なる政治上の象徴ではない。この一帯には国家機密に関わる地域が多い」。コー博士によれば、「海南は中国にとって海軍の基地というだけでなく、海洋上の核抑止力という軍事上の主要拠点」でもある。監視システムの配備は、周辺海域を厳重に監視できる能力が向上したことの現れでもある。さらに、有事の際は迅速に防衛計画を実行できることを意味する。
新しい監視システムは、そのために最適な地域である海南の東岸沖にある人工島に設置されている。人工島と〈海中の万里の長城〉を連動させることで、中国は領海のみならず公海も管理するインフラを手に入れつつある。存在感を示すどころか、地域全体を支配することになるかもしれない。