そんな中、人気店のメニューを冷凍して販売する自動販売機「ど冷えもん」が人気を呼んでいる。ラーメン、コロッケ、唐揚げといったものから、おせんべいやケーキまで、その店ならではの味を楽しめる自動販売機が全国各地に広がっている。屋外に設置すれば、24時間購入できる仕組みで、売り上げの低迷で苦しんでいる飲食店の救世主として期待されている。
一度聞いたら忘れられないネーミングも魅力的な「ど冷えもん」。さまざまな容器の形状に対応できるマルチストック方式を業界で初めて取り入れた。これらの機能が合わさったことで、店側のニーズに合わせて、売りたいものを自由に売れる仕組みが完成した。
「アイス自販機」の応用で
「ど冷えもん」は幅1030mm、奥行797mm、高さ1830mm。それほどかさばらず、店舗の隣に設置しやすい。閉店後も非対面・非接触で提供できることから、帰りが遅くなった会社員からも「時間を気にせず、店の味が楽しめる」と好評を得ている。
自動販売機にタッチパネルを搭載することで、購入時に複数のメニューの一括選択が可能になった。支払いは、電子マネーやQRコード決済にも対応していることから、防犯対策になる上、現金の集金手間が省けるのも経営者にとって大きなメリットだ。売り上げや在庫確認はインターネット上で管理でき、補充のタイミングをこまめにチェックして、在庫切れが回避できる。また、冷凍販売することで、食品ロスを抑えられるのも時代の流れに沿った売り方といえるかもしれない。
この自販機を開発したのは東京都墨田区の「サンデン・リテールシステム」。これまでアイスクリームなどの冷凍自販機を製造・販売してきたが、規定サイズの容器で販売する想定が一般的だった。飲食店から店頭で販売できる自動販売機がほしいという声を受けたことをきっかけに、さまざまな大きさの容器を同じ自動販売機内で扱えるようにと開発したという。
ステーキ、コロッケも販売──ミシュラン星付き店も
ど冷えもんを初めて導入したのは、東京都新宿区のラーメン屋「太平軒」だ。店先に設置し、冷凍豚骨ラーメンなどを販売して、そのユニークな発想が話題を呼んだ。
そして、うわさを聞きつけた全国の飲食店から注文が殺到する。使い方は店舗によってさまざま。馬刺し、ステーキ、イクラ、冷凍ケーキ、おかき、コロッケなどが自販機で販売されている。店頭での販売と遜色ないように、と自販機の横に手土産用の紙袋を設置したり、領収書をメールで受け取れる体制をとったりする店舗もあるという。
実際に設置した飲食店からは「これまでと違った客層にも買ってもらえるようになった」「販売する手間がなくなった分、調理に専念できるようになった」という声が上がり、一人で切り盛りするワンオペ店主の強い味方になっている。
サンデン・リテールシステム代理店の「コスモ機器」担当者は「クラウド売上の機能を申し込みされたお客様は、いつも楽しみに販売状況を確認されています。コンビニエンスストアでもスーパーでも置いていない冷凍商品を屋外販売することが可能。冷凍自動販売機が開発されたことでお店でしか食べられないものが自宅で食べられる時代に変革したのかもしれません」と今後の展開に期待を寄せる。
ど冷えもんを早々と導入した飲食店の中には、ミシュラン星付きのお店や、行列のできるお店も少なくない。コロナ禍での新常態に対応した売り方に挑戦することで、新たな顧客獲得につなげている。発想の転換次第で、逆境にポジティブに向かっていく姿勢が今後も広がるかもしれない。