2014年に深圳を拠点とする飲料チェーンを立ち上げた共同創業者の彭心(ペン・シン)と趙林(ジャオ・リン)夫妻は、奈雪の茶の上場により各人が少なくとも11億ドルを保有することになる。
目論見書によると、同社は1株あたり17.2香港ドルから19.8香港ドルのレンジで2億5730万株を売り出すことで、最大6億5600万ドル(約725億円)の資金調達を目指している。奈雪の茶の上場には、UBSアセットマネジメントや中国南方アセットマネジメント、GFファンドマネジメントなど5つのコーナーストーン投資家が集まっている。
同社は上場で調達した資金でサプライチェーンを強化し、中国国内で600以上の店舗をオープンさせるという。奈雪の茶のメニューは、伝統的なお茶にフルーツやチーズなどをブレンドしたものが多く、若い消費者の間で人気となっている。
昨年のパンデミックの際には、中国国内の約500店舗を一時的に閉鎖したが、同社はそれでも前年比25%増の4億4500万ドルの売上を達成した。しかし、純損失も2019年の620万ドルから、2020年は3150万ドルへと大幅に拡大した
地元メディアの報道によると、夫妻は2013年に知り合って3カ月後に結婚し、その翌年に深圳で1号店を立ち上げたという。奈雪という店名は、彭のハンドルネームだったとされている。同社は2020年7月に日本の大阪にも進出し、現在は彭がマーケティングと商品開発を行い、趙が経営と戦略を統括している。
目論見書によると、奈雪の茶は2018年以降、毎週のように新しいドリンクをメニューに載せて、競争の激しい市場で消費者を惹きつけている。中国の一般的なお茶の価格は1.6ドル程度だが、奈雪の茶のチーズストロベリーティーの価格は約4ドルという、まさにプレミアムな価格帯で売られている。
奈雪の茶の競合としては、同じく深センで爆発的な人気を獲得した「HEY TEA(喜茶)」などが知られている。
調査企業Aequitas Researchのアナリストは、「奈雪の茶は、この分野のリーダーではないが、競争の激しい業界で独自の地位を築いている。Hey Teaと並んでトップに立ち、かなりのシェアを獲得できたことは称賛に値する」と述べている。