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2021.05.21 16:00

医療スタートアップに出資のタカギセイコー、眼科の遠隔診断に本腰

髙木一成 タカギセイコー代表取締役社長

髙木一成 タカギセイコー代表取締役社長

近年、モノづくりを手がける中小規模の事業者では、従来の製造業向けビジネスだけでなく、自社の技術力を生かして、高い品質と信頼性が要求される医療分野に挑戦するケースが増えている。

そんななか、「スモール・ジャイアンツ アワード2019-2020」でグローバルニッチ賞を受賞したタカギセイコーは、さらに一歩踏み込んだビジネスに着手している。それが、眼科の遠隔診療サービス事業だ。
 
長野県中野市を本拠地とするタカギセイコーは、目の診断に用いる顕微鏡「スリットランプ」など、眼科向けの医療機器を自社で設計、開発から製造、販売まで一貫して手がける。50年近く前から海外市場に進出し、現在は世界80カ国に自社製品を展開している。
 
このほど医療スタートアップのMITAS Medicalと手を組み、スマートフォンに装着するだけで、診察に必要な品質の眼画像を簡単に撮影できる「MS1モバイルスリットランプ」を開発した。眼科の専門医がいない地域などで、眼科以外の医師や、看護師などが患者の目の様子を撮影。これをMITAS Medicalが開発した専用のアプリケーションを通じて遠隔地にいる眼科医にデータ送信し、診断するという仕組みを想定している。
 
アジアなどの新興国では、眼科などの専門医が十分に育っていないケースが多い。すでにモンゴルで実証実験を開始し、今後はカンボジアでの展開も計画している。タカギセイコーが長年培ってきたグローバル規模のネットワークを生かしていく予定だ。

代表取締役社長の高木一成は、「もともとは離島など、専門医がいない地域での需要を想定して2年ほど前に取り組み始めたのですが、今回のコロナ禍に伴い、遠隔医療に対する社会からの要請そのものが高まっていると感じています」と話す。
 
20年9月にはMITAS Medicalに4500万円を出資し、資本業務提携した。タカギセイコーが外部企業に資本投入したのは今回が初めて。これは高木の覚悟の表れといえる。「遠隔医療サービスに深くコミットする。必ずいい結果を出したいんです」。


たかぎ・かずしげ◎2017年に33歳の若さでタカギセイコー3代目の社長に就任。眼科手術用の顕微鏡や診察機器のほかに、視力表や検査に使用する机や椅子も製造し続けている。「SMALL GIANTS AWARD 2019-2020」ではグローバルニッチ賞を受賞した。

文=眞鍋 武 写真=小田駿一

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