あなたはすぐに踵を返し、別の飛行機に乗ろうとするのではないだろうか?
これは極端な喩え話だろうが、現代に古めかしい流儀で運営されているファッション小売サプライチェーンでは、本来賢明な企業幹部やマーチャントたちが、次のシーズンに文字どおり闇雲に飛びこむような状況が起きている。
「顧客が求めるもの」を的確に製造したり仕入れたりすることを可能にする革新的技術は、しばらく前から数多く存在している。それではいったいなぜ、服や靴やアクセサリーのデザイン、製造、販売に関しては、私たちはいまだに、暗黒時代にはまりこんでいるようなやり方を続けているのだろうか?
型紙作成から始まり、ラストマイル(最終拠点からエンドユーザーへの物流)までにわたるサプライチェーン全体を、予測分析やVOC(顧客の声)活動に基づいてデジタル化することは、もはやサイエンスフィクションではない。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが社会を激変させた結果、デジタルトランスフォーメーションを無視する企業は、みずからを危険にさらしていることがきわめて明確になっている。
マッキンゼー・アンド・カンパニーによれば、新型コロナウイルス感染症は企業を「技術の転換点」に追いこんだという。そして、顧客とサプライチェーンのあいだの相互作用が加速度的にデジタル化されたことで、ビジネスは永遠に変わったという。いまや、未来はここにある。それは、過去の旧システムよりも速く、手軽で、正確で、収益性が高く、はるかに持続可能だ。
サプライチェーンという概念さえ、時代遅れになっている。なぜか? 顧客中心の方針を徹底している企業は、デマンドチェーンを重視しているからだ。これは、パラダイムを引っくり返すものだ。単に、顧客が買ってくれますようにと祈りながら「品物」を製造するのではなく、顧客が本当に買いたいと思える商品を製造する。これを機能させるためには、ブランドは顧客に近づき、データを活用して、システム全体で需要に対応しなければならない。
顧客の需要に関する理解とデータの活用は、小売業者が品ぞろえを向上させ、勝利を手にする助けになる。小売分野で長い経験をもつ製品開発専門家で、707インターナショナル(707 International)の最高経営責任者(CEO)であるショーン・コクサル(Sean Coxall)は、次のように述べる。
「顧客に近づきさえすればいい。顧客はすでに自分の買いたいものを知っている。ファースト・インサイトのような会社を利用すれば、顧客との関係を築き、顧客が払ってもいいと思う価格や、顧客の求める色などを把握できる。そうしたもろもろのデータがあれば、より利益率が高く、大きく値下げしなくて済む製品をつくることができる」