そして3つ目の要因が、日本での感染拡大だ。変異株により感染者がかつてないほど急増し、4都府県に緊急事態宣言が発令され、ステイホームが広く呼びかけられるなか、旅行などはもってのほか。仮に先の2つの要因をクリアした場合でも、海外旅行に行く気を躊躇させる社会全体のムードがあるだろう。
航空・旅行業界は、アフターコロナに向け準備
ハワイでは2021年5月11日から、ハワイ州民を対象にハワイ州内の隣島間で、ワクチン接種を受けて15日間経過した人は隔離措置が免除となる「ワクチン・トラベル・プログラム(通称、ワクチン・パスポート)」を開始する。このプログラムは今後、米国本土、そして海外諸国まで順次対象が拡大される予定で、アフターコロナのハワイ旅行を促進する起爆剤となっていくと予測される。
日本では一般の人がワクチンを接種できるようになるまでは、まだ時間がかかるとみられるが、ワクチンを接種していない人に関しては、これまでと同様に事前検査で陰性を証明できれば隔離が免除される「ハワイ州事前検査プログラム」を利用することが可能だ。
さらに、日本の航空業界、旅行業界でも、ハワイ旅行促進に向けた動きが出てきている。JALは、ハワイ線で3月より、「ハワイ州事前検査プログラム」を利用する人に対し、日本出発時に書類審査を実施し、到着時のハワイ州検疫係員の手続きが簡略化される「プリクリアランス」を開始した。さらに、検査結果をスマホで確認できるデジタル証明書アプリ「コモンパス」「VeriFLY」「IATAトラベルパス」の3つについて、ハワイ線とシンガポール線で4月に実証実験を行っている。
ANAでは3月より、検査結果やワクチン接種記録をアプリ上で管理できるデジタル証明書アプリ「IATAトラベルパス」の実証実験を、国際線で開始。これに加え、ANAトラベラーズでは早くも、2021年7月1日から12月24日出発のハワイツアー商品の販売を開始している。
ハワイ側も、日本の航空業界も、日本とハワイを結ぶ海外旅行の体制準備を着々と進めているのだ。
ハワイでは現在、1回以上のワクチンを接種した人が人口の37%(4月26日時点)に達し、感染者数を低い水準に抑えている。観光業を始め、ハワイ経済全体が回復へ向いていることを考えると、かつて「ドル箱路線」と言われた日本ーハワイ間の旅行復活の鍵を握るのは、日本の感染抑え込みと日本の出入国の規制緩和と言えるだろう。