━━新刊はコロナ禍以前の執筆ですが、コロナ禍後に書いていたら、内容に変化はあったでしょうか。
グラットン:そもそも、パンデミックが起こっていたら、コロナ問題にかかりきりで、この本は執筆しなかっただろう。とはいえ、パンデミックを契機に、今後、仕事がどのように変わっていくかを予測する記事は書いている。世界の企業に対し、変革に向けたアドバイスも行っている。ポイントは2つ。パンデミックは、テクノロジーによって働き方の「柔軟性」と「生産性」を高める好機だということだ。
━━コロナ禍で、個人のあり方や働き方、個人と企業の関係などはどのように変わると思いますか。変化にかかる時間軸は速まるのでしょうか。
グラットン:働く場所と働く時間の柔軟性がカギになる。パンデミックで、私たちが働く場所について柔軟性のある対応ができることがわかった。特に日本では、長時間労働の必要性を問い直す好機だ。
変化の速さは確実に加速する。パンデミックの影響は計り知れない。2年前だったら、典型的な日本企業である富士通が、あれほど迅速に在宅勤務制を決行するなどとは予想もできなかった。在宅勤務は不可能だという思い込みに疑問が呈された。川に物を投げると時間とともに流れていくように、企業が、もはやコロナ禍前の状態に戻らないのは確実だ。
私たちは、テクノロジーを人間の役に立つようにつくらねばならない。人間には、それができる。私たちを待っているのは、とても明るい未来だ。
20年9月にオンラインで掲載した記事内で、新入社員に向けて、趣味を含めて、仕事から離れた「金曜日のコミュニティ」をつくる努力をすることなど、4つのアドバイスをしている。
リンダ・グラットン◎ロンドン・ビジネススクール教授。1955年生まれ。人材論、組織論の世界的権威。組織イノベーションを促進する企業Hot Spots Movement創始者。「働き方の未来コンソーシアム」を率いる。著書に、日本でもベストセラーとなった『ワーク・シフト』『LIFE SHIFT』などがある。
Forbes JAPAN6月号「新しい働き方・組織」論特集では、本記事のほか、世界最強組織ネットフリックスの「組織と個人の関係」、日立製作所・ソニーグループ・ライフネット生命の「CHRO」たちの哲学、楽天・トヨタ自動車・サンリオエンターテイメントなど、企業たちの先進的な取り組み、起業家の新しい挑戦などをラインナップする。