緊急用の現金を準備しようとした企業各社のために、金融機関は、記録的な額に上る債権や株式を処理することができた。また、コロナ対策の現金給付やその他の経済救済策の分配においても、重要な役割を果たした。モバイルバンキング技術のおかげで、顧客は自宅にいながら財務処理を行うことができ、金融市場は銀行に対する揺るぎない信頼を示した。ワクチンの世界的供給が進むなか、銀行は圧倒的成功の最前線にいる。
世界経済は、華々しい復活を遂げようとしている。5%以上のGDP増加が見込まれる米国は、その筆頭だ。失業率は急速に低下しており、3月には100万近い新規雇用が生まれ、求人数も過去最高水準を示した。ワクチン接種を受けた消費者は支出を増やしている。
一方、株式市場や不動産売買は史上最高値を更新し続けている。金融機関は、パンデミックの暗黒の日々に積み立てていた引当金をまもなく取り崩すだろう。金利や景気と連動するかたちで、金融機関の収益予測も上昇傾向にある。
銀行の素晴らしい業績は、フォーブスによる「世界における最高の銀行(World’s Best Banks)」リストにも反映されている。このリストはフォーブスが市場調査会社スタティスタと共同で毎年発表しているもので、今年で3回目となる。
スタティスタは、世界28カ国の4万3000以上の顧客を対象に、彼らが現在利用している、または過去に利用していた銀行との関係について意見調査をおこなった。各銀行は、総合的な推奨度と満足度に加え、5つの下位項目(信頼度、取引条件、カスタマーサービス、デジタルサービス、財務アドバイス)を評価された。集計された評価の総数、国ごとの銀行の数、達成スコアを考慮した上で、1国につき5から75の銀行を、国内の上位バンクとして認定した。
銀行に対する消費者からの信頼が高まっていることを反映して、今年は過去最多の銀行がリストに選出された。世界各地の約500行が、顧客によって「最高の銀行」として選ばれた。米国からは最多の75行、続いて日本からは50行がランクインしている。フォーブスの調査は今年新たに5つの国・地域(台湾、アラブ首長国連邦、ニュージーランド、サウジアラビア、シンガポール)を加え、調査対象は計28カ国となった。
今年のリストでは、デジタルバンクの好調が引き続き主要なトレンドとなっており、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカ、米国で消費者の支持を広げている。
ベルリンに拠点をおく2013年設立のデジタルバンク「N26」は、今回の調査で世界トップの評価を受けた。5カ国でのランクインでシティバンクと肩を並べ、オーストリアとイタリアではトップの銀行に選ばれた。2020年に顧客数が40%増加し700万を突破したN26は、フランスで2位、スペインで4位、地元ドイツでは13位にランクインした。
日本でも、デジタルバンクが上位を占めた。SBIホールディングスが共同出資して2007年に設立された住信SBIネット銀行が首位。続いて、日本最大のネットサービス複合企業である楽天が設立した楽天銀行が2位。ソニーグループが2001年に設立したインターネットバンクのソニー銀行が3位となった。
米国でも、デジタルバンクの人気が浸透しつつある。2020年8月、デジタルバンクとして初めて連邦預金保険公社(FDIC)と連邦準備制度(FRS)から(全米規模の)銀行設立認可を受けたVaro Bankが37位に選ばれたほか、Chime(43位)、オンライン専用銀行のDiscover(17位)やCapital One(25位)などがランクインを果たした。
中小銀行も好調だ。ミズーリ州スプリングフィールドに拠点を置くGreat Southern Bancorpは、米国で1位、世界でも2位の評価を受けた。世界トップクラスの評価を受けた銀行のうち4行は、地域の小規模金融機関だった。
「世界における最高の銀行」全リストは、フォーブス英語版サイト(https://www.forbes.com/worlds-best-banks/)で公開されている。