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Photo by Matt Cardy/Getty Images

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で、たばこの売り上げが増加したと聞いても、驚く人は少ないかもしれない。すでにあった依存症に、コロナ流行下での隔離生活、退屈さ、不安やうつ状態が重なり、不健康な対処行動は増加した。

大きな危機の最中には、たとえそれが不健康な行動であったとしても、効果が確実な対処メカニズムに頼ろうとするのは、理にかなったことだ。人々が薬物などを乱用するのは、それによって一時的であっても苦しみから解放されるからだ。

医療関係者らはコロナ流行中の禁煙を強く呼びかけたが、喫煙量はむしろ増加したようだ。英国で行われた調査では、喫煙者のうち、コロナ流行中に喫煙量が増加したと答えた人の割合が25%、以前と変わらないと答えた人は50.9%で、喫煙量が減った人は20.2%のみだった。

米ニュージャージー州では、喫煙者がコロナワクチンの優先接種対象となっており、これには慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)などの喫煙関連疾患がない喫煙者も含まれる。喫煙の習慣があるというだけで、教師やエッセンシャルワーカーよりもワクチン接種が優先されるのだ。米デラウェア州もまた、過去または現在の喫煙歴があることを、ワクチン接種対象となる健康面での要件に含めている。

喫煙によって新型コロナウイルス感染症の重症化リスクが倍増することから、喫煙者が優先接種対象となるのは理にかなっていると考えることもできる。重症化すれば、本人や家族が大きな苦痛を強いられるだけでなく、医療現場のひっ迫と医療従事者の慢性的なストレスにもつながる。

一方で、喫煙は個人の選択であり、その有無でワクチン接種の優先順位を決めるべきでないという意見もある。ただ、ニコチンは依存性の極めて高い物質だ。また、人は何の理由もなく依存症になるわけではなく、過去に負ったトラウマ、神経伝達物質レベルの違いなど、さまざまな要因によって依存症になりやすい人が多く存在する。

流行初期には、新型コロナウイルス感染症への喫煙・ニコチンの影響をめぐる情報が錯そうした。同感染症の治療にニコチンが有効であるかもしれないとした科学論文までもが2本登場したが、その科学的根拠は後に疑問視されている。

では、今後すべきことは何なのだろう? 禁煙運動や、そうしたプログラムに対する財政支援は続けられるべきだ。公的資金を受けた禁煙運動は大きな効果があり、禁煙が6カ月後も続くことが分かっている。

さらに、依存症に対するスティグマ(負の烙印)をなくす努力も必要だ。その一環として、調査研究の分野をふくめ、依存症と依存者について語る場合に使用する表現を変える必要がある。ニコチンなどに依存する人に悪いイメージを植え付けることで喫煙を減らせると思っている人は多いが、実際にはそうではない。むしろ、当事者の不安やうつを増大させ、喫煙量が増える原因となる。

編集=遠藤宗生

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