経済・社会

2021.03.11 07:15

福島第一原発事故10年は「節目」ではない M7.3福島県沖地震が私たちに突きつけた現実

福島第一原発の事故現場は、むしろ新たな施設やタンクが次々と建設されている(Getty Images)


余震が気付かせた「安全神話」


だが、東電は2月14日以降に地震の影響を発表していく。高さ10メートルを超える中低濃度の汚染水が入った大型タンクの位置がずれていたことが判明。構内に1074基ある大型タンクの調査は14~24日までかかり、53基が最大19センチずれていた。東電によると、タンクは倒れるのを防ぐために土台に固定していないという。
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2月19日には原子炉の「異常」を示す発表があった。1号機と3号機の原子炉格納容器内の水位が低下。1~3号機はメルトダウン(炉心溶融)で炉内にあった核燃料が溶け落ち、格納容器底部には溶融核燃料(デブリ)が残っている。発熱を続けているデブリを冷やすため、東電は炉内に1時間当たり3トンを注水している。にもかかわらず、水位が30センチ以上下がり、なお低下傾向にあることが判明した。

原因として考えられるのは、10年前の事故時にできた格納容器の傷が地震によって広がったことだ。核燃料が水面から露出しても、すぐに温度が上昇して新たな事故につながる可能性は低いものの、容易には確認できない原子炉内では異変が起きていた。この一報を知り、私は反省した。

「福島第一原発は発電所ではなく、事故現場だった」
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現場作業員の努力で、福島第一原発のリスクは相当に減った。地震で倒壊の恐れがあった1、2号機排気筒(高さ120メートル)は半分まで解体され、津波で建屋地下にたまる汚染水が海に流出しないよう、防潮堤や水を通さない扉がつけられた。そういったことを報じ続ける中で、どこかで「福島第一はある程度安全」と思うようになっていた。「2.13」は、その甘い考えを吹き飛ばすには十分すぎるほどだった。

福島第一原発事故現場
事故時の水素爆発で上部が吹き飛んだ1号機原子炉建屋。2月13日の地震後、原子炉格納容器内の水位が低下した

福島第一原発
複数の損傷が見つかっていた1、2号機排気筒は頂部から専用装置で輪切りにされ、2020年5月に高さが半分に。地震による倒壊リスクが減った(東京電力提供)

膨大な量の放射性廃棄物はどこへ?


東京ドーム75個分に相当する敷地面積がある福島第一原発では、放射能に汚染された大量のごみが出続けている。事故当初に活躍した消防車やコンクリート圧送車も、行き場を失ったまま構内に保管されている。使用済みの防護服など汚染レベルが低いものから、人の命にかかわる高い放射線量を出すデブリにいたるまで、その量は膨大だ。見方を変えれば、原発構内のほとんどの施設は、廃炉を「更地にすること」ととらえると、いずれ全てごみになる。

一部は焼やしたり、細かくしたりして容量を減らせるものの、最終処分方法は決まっていない。そもそも、どこか別の場所に持ち出せることができるのかも分からない。


放射性廃棄物を輸送する作業員。2016年2月撮影(Getty Images)
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文=小川慎一

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