コロナ禍がトリガー引いた「スポーツ産業の変革」リーダーたちはこうみている|PwCスポーツ産業調査(上)


COVID-19が及ぼす影響 完全な回復は2022〜2023年以降か


改めて説明するまでも無く、スポーツ産業はCOVID-19という過去に例のない公衆衛生上の危機によって大きな打撃を受けている。今回の調査によると、スポーツ産業の完全な回復は2022〜2023年以降と予想されており、今後もその影響は当面の間続くものと考えられる。

ここでは、COVID-19がスポーツ産業にもたらした短期的/中長期的な影響と今後の見通しについて触れてみたい。

まず、短期的な影響としては、大規模な人の集まり・イベントの上に成り立っているという産業の特性上、多くの大会やイベントの中止や延期は業界の基盤を揺るがしている。そして、今回の調査の回答からは、他の産業に比べてもCOVID-19感染拡大への備えという面で平均以下の水準であり、スポーツ業界は外部要因の危機に不慣れであることも露呈した。

急成長するハイブリッドスポーツ


こうした状況ではあるが、一方で新たな産業の萌芽も見受けられる。COVID-19影響下において、身体運動とバーチャル機能を組み合わせたハイブリッドスポーツと呼ばれる分野のスポーツが生まれ、急速に普及している。

特に自転車競技においてその動きは顕著であり、Digital Swiss 5やVirtual Tour de Franceなど多くのメジャー大会をバーチャルで代替を行っている。また、一部報道によると、こうしたハイブリッドスポーツ(IOCではバーチャルスポーツと呼称)については、将来的な五輪へのプログラム追加についてIOCにて検討に着手する動きがみられる。

また、中長期的な影響として、COVID-19による困難な状況は一方でスポーツ産業におけるあらゆる変革を加速させている。特に、変革のキーワードとして挙げられるのは、デジタル変革、収益源の多様化、外部からの投資、であろう。

・COVID-19がもたらす可能性の高い変化 ━ 回答者の割合、2つのうちいずれかを必須選択

COVID-19がもたらす可能性のグラフ
出所:PwC、N=698

これまでも検討はされていたものの、なかなか実行に移すことが出来なかった様々な試みが躊躇なく実施されている。

例として、バーチャル観客席、ハイブリッドスポーツ、リモート環境を活かしたファンサービス等、多くの分野で実験的な取組みが推進され急速にそのノウハウを積み上げている。

そして、(必要に迫られてという側面はあるものの)外部からの投資にも寛容かつ積極的になることで、スポーツリーグ・クラブの経営及びガバナンスに新たな企業や投資家が参画する機会が増えてきている。こうした動きは企業や投資家との新たな協働関係を生み出し、従来では予想出来なかった収益源の創出が促進される可能性がある。
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文=菅原政規、安西浩隆、土斐崎豪

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