だが、喉から手が出るほどワクチンを必要としている米国で同社のワクチンの使用が認められるかどうかは、依然として不透明だ。米食品医薬品局(FDA)がこのワクチンを承認していないのは、なぜだろうか? 答えは簡単だ。アストラゼネカが今のところ、米国内での緊急使用許可を申請していないためだ。
ヘルスケアとライフサイエンス分野を専門とする米投資銀行SVBリーリンクのアナリストは未申請の主な理由について、FDAが「米国での臨床試験のデータを確認してからだと考えているためだろう」と指摘する。そのデータがそろうのは、今年上半期中との見方だ。
一方、アストラゼネカの広報担当者は、「向こう数週間内」には明らかできると述べている。だが、具体的なスケジュールは示されていない。
重症化の予防に高い有効性
アストラゼネカのワクチンは、すでに米国で承認を受けているモデルナと、ファイザーとビオンテックが開発した2種類のワクチンとは製造方法が異なる。
アストラゼネカ以外のワクチンはどちらも、mRNA技術を使用。これは、ウイルスの遺伝子であるメッセンジャーRNA(mRNA)を用いて体内の細胞にウイルスの断片を生成させ、それが免疫系の反応を誘発して抗体が作られるというものだ。
一方、アストラゼネカのワクチンは、チンパンジーに感染する風邪ウイルスを無害化し、新型コロナの遺伝物質を組み込んで使用している。このウイルスがベクターとして働き、接種を受けた人の細胞に遺伝情報を伝達すると、指示を受けた細胞がmRNAの役割を果たし、免疫反応を促すウイルスの断片が生成される。
これまでの臨床試験では、アストラゼネカのワクチンは2回接種した場合の有効性が82%とされている。ファイザーやモデルナのワクチンと同様、入院や重症化、死亡を防ぐことに高い有効性を示している。
また、2社のmRNAワクチンが超低温冷凍庫を必要とするのに対し、アストラゼネカ製は冷蔵庫での保管が可能だ。